東大生からのメッセージ
なぜ、学ぶのですか。
真剣に向き合ったことはありますか?
私なりの考えをここに記します。
学び舎から 灘、東大へ。
私たちは何のために学ぶのでしょうか
今から十余年前、新しい学び舎が誕生しました。新築の木造校舎は輝いて木の香りに満ちていました。静かな教室に野鳥の声が響きます。
私はいつもさわやかな気持ちでした。「こんにちは」と元気に挨拶して、いつもの席に座ります。問題集をカバンから出して新しいページを開きます。
そこには未知の世界が広がっており、私は興奮する気持ちを抑えながらじっくりと説明を読み、問題に取り組みます。
きりのいいところまで解ければ、先生に見てもらいます。できなかったところは再び自分で考えます。どこが間違っていたのか、なぜ間違えたのか・・・。思いを巡らせながら正解へとたどりつきます。
学習の時間が終わりに近づくとファイルを取り出して、「学習の記録」を書きます。その日にやったこと、感想を一生懸命に記入します。やる気に満ちていた私は欄からはみ出すほど書き込みました。次回に先生からどんなコメントが来るのかな、そう思って提出します。
鉛筆、消しゴム、問題集、ノート。
自分の大切な勉強道具をカバンにしまって、「さようなら」と元気よく木の扉を開いて帰ります。
今日学んだこと以上に気持ちは大きく膨らんでいました。
これが私の学び舎での学習でした。
私にとって勉強とは未知の事柄を知ることであり、それを深く理解することでした。楽しみをともなうものであり、満足を与えるものでした。
そして、学び舎は勉強に最適な空間でした。いちいち他人のペースに合わせる必要がありません。細かく指示されることもありません。自分で自分なりの学習方法を考え満足のいく学びをしていました。
何よりも教室が素晴らしかった。木の教室で学べたのは非常に幸せでした。
これ以上の学習空間が考えられるでしょうか。私は最高の学習空間で能力を最大限に発揮しました。
私は「勉強しろ」と言われたことはありません
勉強は強制されるものではなく、評価のためにするものでもない。点数に結び付けるものでもなく、偏差値に出して比べるものでもない。
私は長い間、そのように思っていました。しかし、受験を考えるようになってから世の中で言われる「勉強」はそんな私の考えとことごとく反対であることに気づきました。皆は厳しい競争の中で勉強させられ、自らの欲求に従って学ぶ人は皆無でした。そして、競争は大人の手によって作り出されていること、多くの子どもたちは「順位を上げるために勉強」しているにも関わらず、「楽しんで学んでいる」と思い込んでいることを知りました。
私にはあこがれの学校がありました。
そして、その学校に必ず行こうと思いました。束縛や指示を一切受けずに勉強できる唯一の学校だと思ったからです。教師までもが大学進学率ばかりを考えて、試験と課題で生徒を疲労させる歪んだ教育しかしていない学校へは行きたくありませんでした。
私は、猛烈に勉強しました。今までとは違って、過去問も研究して試験を考慮した勉強をしました。誰にも助言を求めたりしませんでした。自分独りでやっていく自信はありました。今までの学び舎の学習が私を支えてくれました。ほかの塾に通ったりもしませんでした。集中できる学習空間、ただそれさえあれば充分でした。
試験のためだけの勉強は何の役にも立たない
私は、確信しました。多くの人は試験があるから勉強します。
そのため勉強が嫌いであり、できれば避けたいものと考えています。そして皮肉なことに重大な試験が控えているとしっかりと武装して立ち向かいます。
しかし、皆が準備した武装は試験が終わるとかえって重荷となり彼らを圧迫してしまいます。いくら膨大なテクニックや解法を身につけたところでそれは試験以外には役立たず、それに費やした多大なる費用と時間、労力は彼らの素質を伸ばす機会を失わせてしまいます。
学び舎では小学生の時から論語や、方丈記、枕草子などの古典や詩を暗唱しました。基礎的教養は自然と身につきました。私はとりわけ詩が好きで、学び舎でのゆったりとした時間の中で思いを巡らせ思索を楽しみました。学び舎の学習は純粋で喜びに満ちたものでした。
東大から学び舎へ
子どもたちに伝えたいことがあります
学び舎通信は毎月発行されます。私は学び舎で学び始めた幼いころから、毎回この通信に目を通し、多くのことを得ました。今度は私が皆さんにお話をお届けする番です。
どのように学んでいけばいいのか、テストや入試にはどのような態度で臨み、何に留意すればよいのか。私の今までの学習や経験を通して得られた助言を皆さんに差し上げたいと思っています。
東京に住むようになってから、地理、自然、生活様式、言語などさまざまな違いに考えを巡らせるようになりました。大学生活や東京暮らし、週末の山歩きなどについても少しずつ紹介したいと思います。ささやかな随想録、紀行文として楽しんでいただけると思います。
毎月1回、東京から学び舎の皆さんへの通信としてお届けいたします。
過去すべての卒業生メッセージは、代表が運営している「子育て&学習の総合サイト」から閲覧できます。