環境と学びの変容

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環境と学びの変容

隅々まで舗装化が進み、空き地は宅地へと変貌し、川やため池は立ち入り禁止の札とともに柵で覆われてしまいました。残された緑地は丁寧に整備され、歩く場所が決められ、動植物採集禁止の看板があちこちに、しつこいほど立てられています。細い路地にも車が入り込むようになり、道路に座り込んだり這いつくばったりして遊ぶのは「危険な行為」に思われてしまいます。

追い打ちをかけるように、電子機器や玩具が大量にあふれ、子どもたちはそれにのみ込まれ溺れて抜け出せない状況にいます。屋内につなぎとめる鎖は、全国で販売され、どの家庭にも存在しています。

そんな中、学ぶのは学校だけ書物だけという事態になってしまいました。理科でモンシロチョウが出てきても、図表を見るだけ、ちょっと幼虫をとってきてそれを眺めるだけ。これで、勉強した気になっていませんか。それだけで、本当に楽しいのですか。

何かを勉強してもそれが書物の上だけでしか生かされず、これから発展する見込みもなく、時間とともに忘れ去られるものであるとすれば、それはあまりにも悲しいことです。

皆さんは、やがては忘却されるようなことを必死になって勉強するために生まれてきたのではありません。どうせなら、目先の点数とか評価とかそういったもののためではなく、もっと究極的なもののために学ぶべきです。生きることに直結するもののために、人生をより深くするために。

しかし、そうはいっても、学校で習うことはあまりにも今述べたような目的からかけ離れすぎています。

あまりにも親切になっています。

皆さんの学習を手助けしようとポイントを絞って伝えます。教科書では重要とされる語句が太字になっており、それさえ覚えればきちんと点数が与えられ、理解できているという評価が下されます。よって、本人も周囲も点数がいいだけで自分はその内容を理解できている、才気煥発であると勘違いしてしまいます。結局は、暗記さえすれば何とかなってしまうのです。

けれども、本当はもう一歩踏み込んで欲しいのです。

表層をちょっとさらっただけで理解できるはずがありません。学ぶことそのものの楽しみを味わえるはずがありません。暗記することと考えることは別物です。皆さんは一日に何時間も考えたことがありますか?一日に5時間勉強したという人はいても、あることについて5時間必死に考え込んだという人はそう多くはいないでしょう。是非ともとことん考えて突きとめる経験をしてみてください。

失われてゆくもの

文明の発達とともに私たちは多くのものを手にしました。自らの能力を何十倍にも伸ばしてくれる機械やコンピューターは各家庭に普及しました。

その一方で、失われたものもあります。満天の星空。空き地。清流。自然の浜辺。もはや取り戻すことは不可能です。

幸せになることはすべての人間の願いであり、最終的な目標です。私たちは幸せになるために様々なモノを作り、所有するようになりました。しかし、それらは幸せの感情を満たすよりも便利さの追求に近いものです。

最新のモノを数多く所有することは生活を便利なものにし、自身を満足させるかもしれません。ただし、心の平穏を保証してくれるわけではありません。少ないモノ、ありのままの自然の中にこそ落ち着ける場所があるものだと私は信じています。

 

——-以下に随想と題してつらつらと日記代わりに書き留めていた私の文章を載せましょう。——-

随想

夕暮れの帰宅

珍しく大学が30分ほど早く終わる。
そそくさと帰る。

久我山駅に着いたのは6時半を過ぎたころ。
日は地平線に傾き、赤い足跡を西の空に残している。
静まり返った住宅街をサラリーマンに混ざって自分の家の方向へ向かう。

それぞれの家からそれぞれの匂いが漂ってくる。カレーの匂い。ああ、食べたいな。焼き魚の香ばしい香り。これはできないけれどフライパンで蒸すことはできる・・・。
食器がかすれてカチャカチャと音を立てる。
窓越しに食卓が見え、老主人が腰かけている。
フライパンに入れられた肉や野菜たちがジュージュー言っている。
鍋がカタカタ騒いでいる。

町全体が巨大なオーケストラ。
いや、劇場。

背景は真っ赤に染められ、細く長い影を付きまとって人は家路を急ぐ。
犬もそれに続く。
町に漂う香り、響く音、染める色。
どんな劇よりも壮大で希望に満ち溢れ、違和感なく心に沁み込んでくる。

これが、日常。

日常という大きな劇。

その中で君も私も主人公である。

観客と同時に主人公でもある。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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