成長のための8つの条件
学び舎通信 139
復習する
人間は一度で知識を覚えることができません。覚えたことでも時間が経てば忘れます。学んだことを身につけるためには、繰り返し練習するしかありません。覚えたはずのことがテストのときに思い出せないというのは、繰り返し練習が足りないのです。
『学び舎通信10月号』にも書いたドイツの心理学者・エピングハウスの「忘却曲線」という実験を覚えていますか。この実験によると、「人は学習した20分後には42%を忘却し、1時間後には56%を忘却し、1日後には73%を忘却し、1週間後には77%を、1か月後には79%を忘却する」ということです。
勉強した後、たったの1時間で半分以上の事柄を、1日後には7割以上を忘れてしまうことになります。
ですから、勉強した後、1時間以内に復習することが習ったことを身につけるための良い方法になります。みなさんに「家に帰ったらすぐ、宿題や復習をするように」と言うのは、そのためです。その日のうちに、その日の勉強内容を振り返り、復習するのがいいのです。「家に帰ったらすぐ、宿題や復習をする」という習慣を身につけましょう。家に帰ったら、かばんからテキストとノートを取り出して、さっさと勉強するのです。こういうことを毎日繰り返ししていれば、理解力も強くなります。
記憶する
「記憶するのが苦手だ」という人がいますね。
いつもの復習に少しだけ手間を加えるだけで、効果が出る復習法があります。毎日、復習をするときに、その日の復習だけではなく、それ以前の復習も併せてするのです。この記憶方法は、「ヒンドゥー・メソッド」と呼ばれていて、インドでは、古くから行われています。ヒンドゥー教では、聖典「ヴェーダ」を口頭で伝授します。確実に覚えることができるように、まず1文目を完璧に覚え、2文目を覚えるときには、1文目をおさらいして覚えるそうです。繰り返しおさらいするという方法で、最後には聖典をすべて記憶することができるそうです。
この記憶方法は、まさに一歩一歩歩みを進めていくような覚え方です。しかし、この一歩一歩が、膨大な知識の定着につながっていくのです。結局、記憶するためには、繰り返し練習しなければならないのです。繰り返し、繰り返し勉強しているからこそ、記憶することができるのです。
また、記憶を定着させる時間帯として、「毎日5分、寝る前に記憶する時間をとる」ことも効果的です。寝る前が記憶に適した時間帯であることは、脳科学でも証明されています。人間は寝ている間に、その日に起きた事柄を思い出し、再生し、記憶を強化しているからです。
毎日を大切に生きる
毎日を大切に生きていると、素晴らしい人生を送ることができると思います。「大切に生きる」にはどうすればいいのでしょうか。
自分のするひとつひとつのことを一所懸命する、言い換えれば、ていねいにする。「大切に生きる」ということは、そういうことではないでしょうか。
朝、起きて服を着替える、顔を洗う、朝ご飯をいただく、歯を磨く。自分のすることを、ひとつひとつていねいにします。朝起きると、一日中、体を動かします。座る姿勢、立つ姿勢、歩く姿勢など体の動かし方のことを立ち居振る舞いと言います。立ち居振る舞いに気をつけていると、体の動きが美しくなります。言葉遣いに気をつけていれば、ていねいな言葉遣いができます。文字をていねいに書こうと思っていれば、ていねいな文字が書けます。
自分のするひとつひとつのことに、心を配るといいです。心は目に見えませんが、立ち居振る舞いや言葉遣いや文字など、その人のすることに、その人の心が表れます。体の内にある心が、言葉や態度や行動となって体の外に出るのです。
自分のすることに心を配れる人は、考える力のある頭のいい人です。脱いだ靴をきちんと揃える、戸を静かに開け閉めする、挨拶をする、そういうひとつひとつのことをていねいにできる人は、集中力があります。なぜなら、自分のすることに集中しなければ、ていねいにすることはできないからです。
人間は、毎日少しずつ変っていきます。毎日良いことをしていれば、少しずつ良い人間になっていきますし、毎日良くないことをしていれば、少しずつ良くない人間になっていきます。良いことを積み重ねていって、少しずつ良い人間に変わっていくのは、素敵なことだと思います。
勉強する
将来、より美しく、より深く、人生を楽しむために、今勉強しておくことが必要です。
「目の前にある一瞬、この一瞬に、思い描く理想の自分に、一歩一歩着実に近づいているんだ」。頭のいい人は、「今、やっていることに意味があるんだ」と、自分に言い聞かせ、未来の楽しみのための準備それ自体を、現在の楽しみにすることができます。
今、勉強している時間を、成績を上げるためだけと考えるのではなく、勉強できる幸せを感じながらするといいです。どうしたら効率よく成果を上げていくことができるかだけでなく、どうしたらこの瞬間を楽しく勉強していくことができるかを考えるといいです。入学試験の場合、合格発表の日を「合格発表」と記入するのではなく、「合格」と記入します。このように「自分の合格日」を記入することによって、毎日毎日が「合格」に一歩一歩近づいていくことを実感できるようになります。
計画を立てる
計画というのは、自分が何を目指し、どこに向かって今を生きているのかを明確にするために立てるものです。一つの到達点としてのゴールを意識して、そこに行くまでの過程を自分の目に見えるようにすることに、計画を立てる意味があります。
計画とは、自分の将来の夢や理想の実現に、現在の自分が一歩一歩近づいていることが実感できるように「見えるようにするもの」です。
「より見えるもの」にするために、自分のゴールする姿をできるだけ具体化するといいです。例えば、「今度のテストで、英語・数学・国語・理科・社会の5教科の合計点を450点以上にする」という具合です。そして、これをさらに「英語と数学は、100点をとる」というふうに細分化していきます。
このようにゴールする自分の姿をより具体的にイメージすることで、目標達成に限りなく近い計画を立てることができます。
続ける
勉強を継続できる人とできない人の大きな違いは、どこにあるのでしょうか。
この違いは、勉強する習慣にあります。すでに習慣になっているものは毎日続けられますが、そうでないものを続けていくことは困難です。
毎日続けるためには、まずは勉強することを習慣にするように心掛けるといいです。「勉強は、自分の生活のリズムである」と脳に思い込ませるのです。
習慣にする
勉強を習慣にする方法があります。勉強する時間を決めておいて、その時間になったら勉強するのです。毎日、同じ環境で同じことをやり続けていくと、必ず習慣になります。習慣にするまでは面倒くさいと感じることもあるでしょう。でも、「習慣にしてしまえば面倒くさいと感じなくなるんだ。それまでちょっと頑張るだけ」と思って続けていると、「勉強しないと気持ち悪い」と思うようになります。
また、頑張るときには、無理をしない程度に頑張るのも続けるコツです。無理をしすぎてしまうと疲れてしまい、その日は何とかできたとしても、その後、続けていくことは難しくなります。だからといって、その日のノルマをこなさずに、あきらめて寝てしまっても、続けることはできません。そこで無理をしない程度に、少しだけ頑張るのです。
集中力をつける
【速さ×時間=道のり】という公式を小学校の算数で習います。例えば、時速4kmで5時間歩けば、20km歩けます。少し速度を上げて時速6kmで5時間歩けば、30km歩くことができます。この速さを集中力、道のりを勉強量にたとえると、
【集中力×時間=勉強量】と考えられます。この式から、集中力を高めれば、勉強量が増えることがわかります。では、集中力を上げるには、どうすればいいのでしょうか。
上の式を【勉強量÷時間=集中力】と変えることができます。この式から、勉強量と時間を明確にして、時間をできるだけ短くする、あるいは勉強量を増やせば、集中力を高めることできる、ということがわかります。例えば、「いつもは30分で問題を20問解くところを、20分で20問解こう」と決めてから、勉強に臨むのです。また、「いつもは2時間でテキストを10ページ進むところを、15ページやろう」と意識して勉強していると、自然と集中力が高まってきます。
ひと月前にこういう話を中学生にしました。そうすると、すぐ実行に移して集中力を高めようと頑張り始めた人がいます。人間は変われる生きものです。「今の自分よりもっといい自分になりたい」と思って、頑張っている人は輝いています。そして、頑張り続けることで、素敵な人になれるのだと思います