小さな命の贈り物 生きる姿の美しさ

学び舎通信 175

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小さな命の贈り物

半年前に学び舎の庭の木を3分の1に減らしました。小さな森が消え、庭は明るくなりましたが、小鳥の歌声や夏の蝉や秋の虫の音が寂しくなりました。 

今、生えているのは、ツツジ・ヤマボウシ・バラ・ジンチョウゲ・キンモクセイ・クチナシ・サザンカ・ツバキ・サツキ・クレマチス・アジサイ・デージー・ジャスミン・オリーブ・ローズマリー・ラベンダー・ドウダンツツジ・ボケ・フジとスイセン・シバザクラなど数種類の草花と実生のクヌギ・コナラです。植物が生長すれば、小さな命で賑やかになります。  

二本あったフジのうち、一本を残しました。藤棚にキジバトが営巣しているからです。キジバトは庭を歩き回り、小枝を一本ずつ嘴でくわえ、藤棚に運び、巣を作ります。6年前もキジバトは同じ場所で雛を育てました。ハトの番いは一生涯、連れ添い、共同で巣を作り、交代で抱卵し、雛を育てます。抱卵して一週間ほどすると、母鳥の体内でピジョンミルクが作られ、このミルクが雛たちの食料になります。 

ひとり息子を育てたときに感じたことは、「この世で幼い命とともに過ごす日々ほど尊いものはない」ということです。子育てをしていて、心の正しさや温かさや純粋さを深く掘り起こすことができたことを、わが子に感謝したい想いでいっぱいでした。

生きる姿の美しさ

高度経済成長期に万国博覧会が大阪で開催された頃、任俠映画が多くの人々を魅了しました。正義感のある主人公が、自分の辛さや苦しさを隠して、真っ当に生きる者を助け、悪事を働く者を懲らしめます。

華やかな生活とはほど遠い暮らしの中で、せめて人間らしく生きよう、人間らしくあろうとするひたむきな姿が銀幕に映し出されます。その姿は、悲しく、淋しく、不器用であり、決して華麗であるとは言えません。しかし、こうと決めたことをどこまでも貫く生き方に、人間の美しさが醸し出されます。

複雑な社会機構や人間関係の中で、自分が正しいと信じる道を、ただ一途に生き通すことは難しいかもしれません。しかし、あるべき生き方を貫くため、もがき苦しみながら、困難を一つ一つ乗り越えて、脇目もふらず生きる姿は、美しく輝きます。

多くの任俠映画で主演した高倉健は、「健さん」の愛称で親しまれました。大学卒業後、生きるために出会った職業でしたが、俳優養成所では「他の人の邪魔になるから見学してください」と言われる落ちこぼれでした。それでも、「辛抱ばい」という母の言葉を胸に、悩み惑いながら、生きる営みに正直に向き合いました。誠実に一生懸命に生きることで、悲しみや苦しみを希望や勇気に変えました。

奇しくも、父、謙三は、健さんと同じ昭和6年に生まれ、健さんが鬼籍に入った3年前に83年の生涯を終えました。失望や哀しみに遭っても挫けないで、まっすぐ前を見て、懸命に生きていれば、本当に大切なものがわかる。それを静かに教えてくれました。

やり抜く力

辛く困難なことに遭っても、地道な努力を積み重ねれば、目的を成し遂げることができます。心が萎れてしまうような挫折を経験することもありますが、それを乗り越えることは、さらなる飛躍のための大事な条件になります。植物に開花の連続が存在しないように、人生にも成功の連続は存在しません。

挫折や失敗は人を孤独の地獄に投げ込みますが、へこたれず、元気を出して、自分の弱さと向き合いながら闘うことで力をつけた人は、再生復活の機会を得ます。そして、それ以前よりひとまわり大きく強い力で、目的に向かって進むことができます。

人間の生活の大部分は、同じことの繰り返しから成り立っています。繰り返しには、一日、一週間、一月、一年などの単位があります。繰り返しは習慣です。良い習慣を身につけることで、生活が充実し、学力が向上します。独りで、静かに、気負わずに、自分のペースで自分の信じる道をどこまでも歩み続けていると、やがて目指しているものが見えてきます。

子どもがやり抜く力を発揮するには、親は、子どもの健康に気をつけ、体によい食事を作ることを心がけ、子どもを信じ、勉強のことは本人に任せて口を出さないようにします。子どもの世話を焼き過ぎたり、ものを与え過ぎたり、やいのやいの言い過ぎることは、子どものやり抜こうとする力を弱めます。 生きているすべての時間に、責任を持たなければなりません。自分に与えられた時間に責任を持つということは、どんな困難にも勇ましく立ち向かって、自分の人生を生き抜くということです。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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