ほんものの体験をする
学び舎通信 188
学びとは自分で考えること
すでにあるものの中から選択するのではなくて、まだないものを生み出す偉大な人は、普通の人とは、自分で考える深さが違います。優れた人は、自分で考えて、自分の力で伸びていくことができます。
いつも自分自身で考えるように努めてほしいと思います。誰が言ったにしろ、他人から聞いたことを全部信じ込まないように、新聞やインターネットで読んだことを全て信じないように、自分で調べないで、人の意見に賛成しないようにしてください。
自分自身で真実を見出すように努めてください。ある問題の半面を伝える強い意見を聞いたときは、もう一方の異なる意見を聞いて、自分自身はどう思うかを決めるようにしてください。いまの時代はあらゆる種類の情報がたくさん流されています。あるものは真実ですが、あるものは真実ではありません。自分自身で真実を見出すことは、世界中の若い人たちが学ばなくてはならない大切なことです。
自分で考え判断する訓練を行うことで、これは本当でこれは嘘だと物事を見極められる力がついてきます。工夫しながら学ぶことは、何が本当で何が嘘かを判断する力をつける訓練になります。
自分でいろいろなことをつかみとっていく。そして実際のものから勉強をする。それが学びです。
自分で考え学ぶことはおもしろい
人の意見に惑わされないようにするためには、どんなことにも、心が動かされない頑丈な地点に立つこと、つまり人がどうあろうと、自分は慌てないという堂々とした考え方が必要になります。
テレビでこう言っていた、インターネットにこう書いてあったなどと、自分の意見を持たずに、他人の言うことを本気にするというのは良くありません。自分で考えることは、前向きに生きる姿勢の第一歩です。自分で考えようとする気持ちが大事です。
自分の考えに責任をもって物事に取り組めば、たとえ失敗したとしても、自分の力で改めることができます。ところが、親や先生がどこそこの学校へ行くのがいいと言ったからとか、何何の試験を受けたらいいと言ったからなど、自分で考えればいいのにと思うことまで、人任せにしてしまう人がいます。
子どもだけでなく、おとなも、自分の考えを持たない人が多くなってきています。これは困ったことで、自分の考えがないと無責任になってしまいます。他人の意見に振り回されたり、惑わされたりして過ごすようでは、自分の生き方ができません。
この原因は、子どもの頃からの学び方に問題があります。自分で学び方を考えようとしないで、人に言われるままに勉強していたのでは、学んだことにならないし、本当のことは身につきません。
ある子どもが「勉強は大切でおもしろい」と言いました。その子は、暗記中心の詰め込み式の勉強ではなく、自分が本当に知りたいことを、自分で考え工夫しながら、自分のペースで学んでいました。
ほんものの体験をする
「図画工作の時間は、上手に絵を描いたり、上手にものを作ったりするのが、目当てではありません。上手に描こうとするよりも、見たり考えたりしたことを、自分で感じたとおりに、描いたり作ったりすることが大切です。真剣に絵を描き、真剣にものを作り続けていると、上手になるだけでなく、人としての感じ方も育ちます。この繰り返しの中で、自然の大きさがわかり、どんな人にならなければならないかが、わかってきます。これが目当てです。」と言った先生がいました。正にそのとおりだと思います。残念ながら、このことを理解する人は少ないです。
実際に体験して知るということは、テレビやインターネットの映像を見て知るということとは違います。例えば、テレビで田舎の映像が映って、出演者が「空気がきれいですねぇ、田舎はいいですねぇ」と言っているのを見るのと、自分が実際に自然の中を歩いて、花が咲いているのを見たり、鳥が歌っているのを聞いたり、雨が地面にしみこんでいく様子を見たり、森の匂いを嗅いだり、というような直接自分が体験するのとでは、感じ方が大きく違います。
子どもが鳥や虫や動物たちと直に接するのがいいです。すべてほんものに触れるというのがいいです。自然に触れるとか自然体験というのではなくて、自然と一緒にいるという言い方がいいかもしれません。 子どもがひとりで自然と一緒にいると、誰かに遠慮することなく、どこに行こうかと考えたり、次に何をしようかと思ったりして、ひとりで自由に計画を立てて、考えを発展させていきます。