活力にあふれた人生を送る
学び舎通信 191
活力にあふれた人生を送る
体の中から、声が聞こえてくることがあります。それが自分の本当の考えや気持ちだと思います。
世界の偉人たちは、書物や伝統や世間の考えに従ったり頼ったりしないで、自分の意見を語りました。
自分の体の中で、ほのかに輝いている光に気づくことがあります。多くの人は、かすかに輝いている自分の考えをそれが自分の考えだという理由で無造作に扱います。その考えを使って、何ができるかを知っているのは本人だけですが、実際にやってみるまでは、本人にさえそのことはわかりません。
自分のやるべきことに、真心を込め、最善を尽くせば、心が安らぎ、晴れやかになります。慎ましく、誠実で、平穏な生活を送る人がいます。そういう人は、体の中から聞こえてくる心の声に従い、素朴で高潔な生き方をしています。正直に生きていれば、真実が見えてくることを知っているのだと思います。
自分のやるべきことを一生懸命になってしていれば、真実が見えてきます。自分のやるべきことに集中すれば、力がみなぎってきて、今の自分よりもっと強い自分になります。こうなりたいと思う自分になるためには、自分を信じて、行動することです。どんなときも、人目を気にしないように努力を積み重ねれば、活力にあふれた人生を送れると思います。
偉人に学ぶ
生まれ持った能力を、毎日の努力で磨いていれば、年齢を重ねるほど、その能力は強く豊かになってきます。それに対して、他人から取り入れた能力は、その場しのぎで、いつまでたっても身につきません。
世界の偉人たちの伝記を読むと、わかることがあります。シェイクスピアを教育できた教師やフランクリンやワシントンやベーコンやニュートンを指導できた教師はいませんでした。ガリレオは、一個のオペラグラスで、後世の誰よりもすばらしい天体現象を次々と発見しました。コロンブスは、甲板もない船で、「新世界」を発見しました。ナポレオンは、野営によって、外部からの支援をことごとく退け、自らの勇気のみを頼りに進むことで、ヨーロッパを制しました。「自分の体の中から湧きあがってくるものだけを人生の指針としたいのです」という偉大な人たちの声が聞こえてきます。彼らは天才です。しかし、すぐれた天才もその本質はひとりの人間です。
ピタゴラスもソクラテスもルターもコペルニクスもガリレオもニュートンも、純粋で賢明な人はみな、世間の人から誤解されました。しかし、偉大な人たちは、「私には自分で定めた高い目標と揺るぎない考えがある。世間に迎合していては行動できない。自分の道を行くのだ」と自分の考えを語りました。
偉大な人とは、何かに頼るのではなく、常に独立心を保っています。「人間はひとりで歩まなければならない。価値があるのはいま生きていることだ。力は活動を止めた瞬間に消える」と知って、心は気高く、意志は揺るぎなく、自分自身を信頼しています。
個人塾の力
あるとき、思想家の吉本隆明さんが、岡本かの子という作家について講演しました。終わって、「岡本かの子について質問したい」というオランダの女子留学生が控え室にやってきました。素晴らしい日本語だったので、吉本さんが「誰に日本語を習いましたか」とたずねると、「自分で勉強した」と言うのです。次に、「誰から教わって『岡本かの子』を 研究テーマにしましたか」とたずねると、「自分で見つけました」と言うのです。吉本さんは「世界にはこんなに素晴らしい女子学生いるのだな」と思って、「自分も少しは負けずに勉強しなくては」と思わず刺激された、という出来事を著書に綴っています。
吉本さんは別の著書で、「少数の個人の私塾は、いまも学校制度に失望した子どもの砦みたいに、膨大な影響を与え続けているに違いない。制度は解体して、私塾に近づけたほうがいいのではなかろうか。少数の私塾の先生が、独力でそのユートピアを支えてゆくに違いない」と述べています。
やるべきことを自分で見つけて自分で学ぶことが、本当の勉強です。いま、日本の教育機関でこういう勉強ができる所は、志を持った塾長がひとりでまたは家族で営んでいる個人塾だけだと思います。 洞察力のある教師は、「教えれば教えるほど、子どもが自分の力で学ぶことができなくなってしまい、子どもの能力を伸ばすとか、子どもの世話をする、という教育の機能に反した結果が出て、逆に子どもを不能化してしまう」ということを理解しています。心眼を開いて教育しなければなりません。