教師という仕事

学び舎通信 184

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学力と教育改革

私が中学3年生だった41年前は、学力テストが毎月ありました。当時は、今より学習内容が多く、難易度も高かったです。私は試験範囲の内容を全て暗記して、学年で1番の成績を通しました。人一倍努力した成果が出ただけで、「自分は頭がいい」とか「優れている」とは思いませんでした。「負けたくない」という気持ちで、人よりたくさん勉強しただけです。

学力テストでわかるのは、点数と順番だけです。あとの能力は何もわかりません。「本当の学力は、テストの点数とは関係ない」と私は思っていました。

今の学校現場は、テストですぐに役立つ学力を子どもたちに求めます。しかし、本当の学力は、競争的な環境で鍛えることはできません。世の中はどんどん変わっていきますから、すぐに役立つ薄っぺらな学力よりも、長い目で見て将来的に役立つ学力を身につけたほうが、立派な人間に成長します。

学校は権力機構です。学校で子どもたちに与えられる情報は、概ね国定情報です。子どもたちは学校の門をくぐると、普段の自分ではない、学校向きの仕種を求められます。また、教師たちも管理され、法令や文書に従って、動かされる傾向にあります。

しかし、上の言うことには黙って従うイエスマンの教師ばかりでは、真の教育改革はできません。

教師という仕事

教育は、教え育てると書きます。しかし、それは教育の本当の意味ではありません。

まず、生きものの根本には学習があって、教育は子どもが育つのを助ける立場にあるのだと思います。

教育が中心ではなくて、まず、子ども一人ひとりの学習があって、その子その子の持ち味を引き出すために教育が役立てばいいと思います。

今は、教科のあり方や内容や教科書から全部決められてしまう教育改革になっています。そして教師たちは、それに踊らされて、忙しい目に遭って、子どもの面倒を充分にみることができていません。テストという子どもの能力の断片だけで、子どもを見ている教師もいます。学校教育のほとんどが、対症療法になってきています。

保護者の方も、テストの成績、言わば症状だけで子どもを見ている人が多いです。テストというものは、能力の極一部について、点数や順番をつけていくという形ですから、ある意味、子どもに寄り添うこととは、反対の姿勢です。人間の子どもを育てるときは、特にていねいな寄り添いが必要なのです。

テストで子どもをモノのように生命を扱うことは、人間の掛け替えのない生命を処遇するという、本来の人権感覚からずれています。子どもたちは、得意不得意も能力も関心もさまざまです。そんな子どもたちを均質化し、管理することに何の意味もありません。教育現場に必要なのは、自由な気風です。

教師という仕事は、子どもの生命にかかわっているという点において、本来、実に質の高い仕事です

目標を成し遂げる強さ

目標を持つということは、「今の自分が、将来は『違う自分』になるということ」です。

若いうちに、できれば中学を卒業するまでに、ものの見方や考え方を作り上げていくことです。そのためには、さまざまな分野の本を読み、自分の頭で考え、自分の言葉で表現することが大切になります。

今の大学生は、「自分がいったい何をしたいのか」がわからない人が多いそうです。これはチェーン店化した塾で強制的に勉強させられてきた弊害です。言われたことだけを従順に勉強するだけで、自分で判断して行動する能力を鍛えなかったからです。

そういうふうに育った学生は、将来に大きな目標を描けずに、安定した仕事に就いて安定した生活を送ることだけを目標にするようになります。これでは創造的なものは生まれるわけがありません。そういう若者は、「違う自分」になれないままでいます。

諦めやすくなって、待つことができなくなった人が増えています。これは、効率性や利便性や即効性を求める社会や学校が、大きな要因だと思います。 

待つことも、諦めないことも、人間的な精神です。大人に待つ余裕や失敗を許す余裕がなければ、子どもは期待通りに育ちません。私は子どもの頃から、「挫折があっても諦めない」という気持ちを支えにしてきました。「失敗しても成功するまで続ければいい。現状が旨くいっていなくても、未来を待つ」という行為とその効果を若い頃から体験してきました。  競争に強いばかりが、強さではありません。じっと耐える強さも、また強さなのです。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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