呼吸法で体の調子を整えよう
学び舎通信 106
学ぶ目的は?
みなさんは、毎日、勉強していますね。
みなさんの勉強する目的は何でしょうか?
多くの人は「テストで良い点を取るため」とか「学校の成績を上げるため」とか「行きたい学校の入学試験に合格するため」に「一生懸命勉強しているのです」と答えるでしょう。今は、そういう目標を達成するために、頑張って勉強するといいと思います。
私は「学ぶこと」の最終の目的は、「よく生きること」だと思います。人間は一生かけて、「よく生きる」ために、学び続ける必要があると思うのです。
しかし、こう言われてもあまりぴんとこないかもしれませんね。みなさんは、今は学力を伸ばすために、一生懸命、勉強するといいと思います。
学習トレーニングを成功させるために
学力を伸ばすための勉強を、「学習トレーニング」と言うことにします
学習トレーニングに成功する人には、いくつかの共通点があります。
成功する人たちは、自分がなぜ学習トレーニングをしているのかという目的が明確です。自分がどこに向かって進めばよいかを理解しています。だから辛いトレーングにも耐えることができ、「トレーニングを続けよう」という気持ちが揺らぎません。落ち着いて勉強しています。これが成功する人たちに共通する最大の特徴です。
目的が明確であるということは、ゴールが明確であるということです。だから、ゴールから逆算して、実行性が高い計画を立てることができています。
また、成功する人たちは、外からの情報に振り回されることがありません。情報に惑わされることなく、自分で学習法を工夫しながら、勉強を続けることができています。
学習トレーニングを続けるとき、「自分がいつまでにどうなりたいか」、「どれほど真剣なのか」を先生に伝えることが重要なのですが、これができない人が多いのです。しかし、成功する人は「自分の目指していること」を伝えるのが上手です。自分の希望を伝えることができるので、的確なアドバイスを受けることができています。
学習トレーニングに成功する人は、トレーニングを続ける仕組みを上手くつくっています。トレーニングが上手くいっている人でも、中だるみになるときがあります。成功する人たちも、いつもやる気が満々ということはありません。やる気が高まらないとき、気持ちが落ち込むときもあります。そういうことがあっても、トレーニングを実行できるような仕組みを作っているのが、成功の秘訣なのです。
メジャーリーグで活躍している松井秀喜選手は、「失敗との付き合いが上手にできなければ、決して長く活躍することはできない。うまく付き合うといっても、失敗が当然になってしまってはいけません。失敗を悔やみ、反省し、そして次につなげる。このサイクルを毎日繰り返していくしかありません」と言います。
教室の中での振る舞いがとても礼儀正しいということも成功する人に共通しています。周囲の人に対する気配りが働き、場を読んだ行動ができています。また、質問するとき以外は、静かに目立たないように勉強しているという点も共通しています。
勉強道具を大切に扱っています。イチロー選手が道具を大事に扱うことは、よく知られています。マリナーズがダッグアウトを改装するとき、イチロー選手は、バットを他人にまたがれることを嫌い、自分の座席の所にバットを差す穴を空けて欲しいと願い出ました。普段は、ヘッドが傷まないように、バットを直接地面に置きません。また、打った後も絶対にバットを投げず、バットを右手で地面に寝かせてから走っています。
最後に、忘れてはならないことは、学力を伸ばすには、長い時間がかかるということです。学力に限らず、力は一朝一夕(わずかな時間)に伸びるものではありません。
「継続は力なり」。学習トレーニングを続けることで、確実に学力を伸ばすことができます。学習トレーニングに成功している子どもたちは、毎日のトレーニングの小さな積み重ねを続けて学力をつけています。
勉強だけではなく、トレーニングを続けていると、人間はいくつになっても、自分を変えていくことができます。80歳を過ぎても道場で稽古に立ち、「昭和の剣聖(聖は、その道に最も傑出した人、という意味)」と呼ばれた持田盛二さんの残した言葉です。
「剣道は50歳までは基礎を一所懸命勉強して、自分のものにしなくてはならない。普通、基礎というと、初心者のうちに修得してしまったと思っているが、それは大変な間違いであって、そのため基礎を頭の中にしまい込んだままの人が非常に多い。
私は剣道の基礎を体で覚えるのに50年かかった。
私の剣道は50を過ぎてから本当の修行に入った。心で剣道をしようとしたからである。
60歳になると足腰が弱くなる。この弱さを補うのは心である。心を動かして弱点を強くするように努めた。
70歳になると身体全体が弱くなる。こんどは心を動かさない修行をした。心が動かなくなれば、相手の心がこちらの鏡に映ってくる。心を静かに動かされないように努めた。
80歳になると心は動かなくなった。だが、時々雑念が入る。心の中に雑念を入れないように修行している」
成功に必要なのは、才能ではなく、勤勉であるということです。そして、人間の優劣は、「どれだけ精一杯努力してきたかで決まる」と思います。
呼吸法で体の調子を整えよう
みなさんは、起きている時も眠っているときも、絶え間なく息を吸ったり吐いたりしていますね。何気なくしている呼吸ですが、呼吸の仕方によって身体の調子が変わります。
調子のいいスポーツ選手と悪い選手を見比べてみると、明らかに呼吸の様子が違います。調子のいい選手は、口元がゆったりとしていて、安定したリズムの深い呼吸をしています。逆に調子の悪い選手は、早く浅い呼吸になっています。
呼吸を上手に活用すると、気持ちを上手く切り替えることができるようになります。
〈気持ちが落ち着く腹式呼吸〉のやり方
お風呂上がりや寝る前など、リラックスできる時間帯と場所を選び、椅子に座ります。軽く目を閉じて、鼻から「ふーん」とお腹かがぺたんこになるくらいまで、息をゆっくり吐き切ります。息を吐き切ったら、下腹が膨らむくらいまで、ゆっくりと鼻から息を吸います。次に息を吐き切る時は、吸う時の2倍の時間をかけて、下腹をへこませながら、ゆっくりと吐きます。(例:5秒間で吸って10秒間かけて吐く。10秒かけて吸い、20秒かけて吐く)以上のことを繰り返し、2~3分間できたら終了です。
秘伝の呼吸法
「息を吸いこんでから腹壁が適度に張るように、息をゆるやかに圧し下げなさい。そこでしばらくの間息をぐっと止めるのです。それからできるだけゆっくりと一様に息を吐きなさい。そして少し休んだ後、一息でまた空気を吸うのです」
これは、ドイツの哲学者、オイゲン・ヘリゲルさんが書いた『弓と禅』という本の中の文章です。
ヘリゲルさんは、今から90年くらい前(大正13年)、東北帝国大学の講師として日本に来ました。5年間の滞日中、ヘリゲルさんは阿波研造という弓の名人に就いて弓道の修行をしました。
しかし、どんなに稽古を積んでも、ヘリゲルさんはなかなか上達できませんでした。そんなある日、阿波先生はヘリゲルさんに、「あなたが弓を正しく引けないのは、肺で呼吸しているからです」と言い、上に書いた呼吸法を教えました。
ヘリゲルさんはこの呼吸法を練習し、だんだんと上手くできるようになってきました。同時に、力を抜いて、楽々と弓が引けるようになりました。力を使わずに弓を引けるようになったのは呼吸法のおかげである、とヘリゲルさんは書いています。
丹田呼吸
丹田とは、臍下丹田とも言われ、臍の下の下腹部に当たる所です。昔から、「丹田に力を入れると健康と勇気を得ることができる」と言われています。
下腹部(丹田)に圧力をかけながら息を吐く丹田呼吸を続けていると、体調が良くなるそうです。気持ちが沈み、不安、心配に襲われ、自信の持てない人は、落ち着いた気持ちを取り戻します。血色がよくなり、生き生きとした表情が戻り、将来に希望が持てるようになります。腹や脳が活性化します。
精神が落ち着いてきます。ホルモン分泌も正常になり安定した心が得られます。
今から2,300年ほど前に中国で書かれた『荘子』という本の中に「真人の息は踵を以てし、衆人の息は喉を以てす」という言葉があります。
真人の呼吸は深く安らかであり、吸った息を、胸から腹へおろし、さらに踵まで下げ、そして腹まで引き上げるように深く呼吸するが、衆人は喉元で呼吸するということです。真人とは、純粋さ・素朴さを身につけ、まことの道を体得した人のことを言います。衆人とは、普通の人のことです。