自己創出力 一歩一歩を積み重ねる

学び舎通信 189

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一歩一歩を積み重ねる

山を歩き始めて、33年が経ちました。心から山を愛する人は、謙虚で、自然を畏敬します。

今年の元旦は午前4時に起きて山に登り、阪南市の南にある標高420mの俎石山の山頂で初日の出を拝みました。茄子紺の空の山際がオレンジ色に輝き、稜線から太陽が昇り始める、その刻々と変化してゆく様子を、静謐とした山の頂で眺めました。

山登りにさいして大事なことは、決して焦らず、自分のペースに合わせながら、一歩一歩確実に歩み続けることです。学び方も山登りと同じように、自分のペースをしっかり守って、一歩一歩確実に学び続けることが大事です。決して他の人と競争したり、記録をつくったりするようなことを考えてはなりません。高い山を登るように、一緒に学ぶ友達とお互いに助け合いながら、学習を進めることが大切です。

自分のペースに合わせて、焦らず、一歩一歩確実に山を登ってゆくと、気がついたときには、信じられないほど高い所まで来ていて、山のてっぺんに立つと、素晴らしい展望が開けます。毎日毎日の努力を積み重ねることで、揺るぎない学力を身につけることができます。決して焦らず、一歩一歩確実に学んでゆくと、始めはとても難しくて理解できないと思っていた問題も、すらすら解けるようになります。

一人前になる

戦後間もない頃に、小学4年生の男の子が書いた「車おし」という詩です。

よいしょ、よいしょ、とうげの坂道。

ぼくは車のあとおしだ。

おとうさんの背中のシャツに、

あせがにじんでいる。

ためしにちょっと、おすのをやめてみた。

車はすこしあともどりした。

おとうさんがうしろを向かれた。

ぼくの力もやっぱり、やくにたっているんだな。

この車はリヤカーだと思います。リヤカーは、畳1枚分ほどの荷台の側面にタイヤが一つずつ付いた荷物を運ぶための二輪車です。私が子どもの頃、荷物を載せたリヤカーを引いている人がいました。

舗装されていない石ころだらけのでこぼこの山道。峠までの急な登り坂。リヤカーの前を父親が引いて、後ろを小学4年生の息子が押している。父と子がお互いの力を出し合って、重い荷物を積んだリヤカーを動かしている。そんな光景が浮かんできます。

私が生まれ育った和歌山県の田舎町には、昭和50年くらいまで、親子が力を合わせて仕事をする姿があちこちにありました。体を使って働くという体験を通して、子どもは一人前の大人になりました。

一人ひとりが違っていて、それぞれが変わっていく可能性を持っています。国家のためにとか、会社の人材とかいうのではなく、自分の設計図によって、自分の持ち味にふさわしい社会的に価値のある出番を仕遂げる。そういう生き方がいいと思います。

自己創出力

人間は「自分とは何か」を問いただすとき、自分自身にいくら聞いても分かりません。他人と交わる中で、自分自身がおぼろげながら分かってきます。

人間は一人ひとりが自分という人間を創る芸術家だと思います。子ども一人ひとりが個性豊かな作品になろうとする、それを助けるのが教師の仕事です。

人間の成長は、学び続けて、自ら変わることです。自ら変わろうとする力は、すべての人間の体の中に具わっています。病気を治すのも医師や薬ではなく、人間の体の中に具わっている治癒力だと思います。

すべての人間が出番を持っています。自分の好きなことをして、何かの役に立つというのがいいです。自分の好きなことというのが大事です。自分の好きなことで、社会的な出番があることが理想的です。

現実は、多くの人が出番を失って、職業はあっても他人からやらされる仕事をしています。定められた手順に従って働いて、給料をもらっています。

本当は、お金を稼ぐためだけに働くのではなく、自分の持ち味を生かして働く。社会に対して自己表現力をもつ仕事で生涯を生きる。これが理想です。

人間は学び続けることで、生涯変わり続けることができると思います。あらゆる生命は「自己創出力」を持っています。自己創出力とは、生命科学で言う「己を創り出していく力」、「自ら変わる力」のことです。自主性や積極性をもって、学び続けてほしい。「南大阪の塾で、『自ら学んで、自ら変えていく力』をつけられるのは、学び舎だけです。その灯を消さないでください」とある人が言いました。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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