学びの達人になる
学び舎通信 128
あけましておめでとうございます
新しい年を迎えて、みなさんは「今年はこうしたい」とか「今年はこうしよう」など、希望や計画を心の中に描いていると思います。みなさんの希望や計画が、本当のことになることを願います。
夢や希望は大きければ大きいほど、容易に実現するものではありません。願いを叶えるためには、長い時間をかけて努力する必要があります。
努力をしても変わらないからと、途中で希望を諦めてしまう人がいます。しかし、最後まで一生懸命努力した人は、「何かを求めて苦労することが生きがいをもたらしてくれる」ということに気づきます。
苦労して得たものほど、心の張り合いを強く感じることができます。そして、「よし、また元気を出してがんばろう」という気持ちが湧いてきます。
努力した結果がどうなるかをあれこれと思い悩まないほうがいいです。大事なことは精一杯努力することで、結果は大して重要ではありません。結果に至る過程、つまり、努力をひとつひとつ積み重ねることが、「よく生きる」ことになるからです。
努力をしないで生きるより、努力を必要とする時間のあったほうが、「ほんとうに生きている」という感じを強く持てます。だから、ありったけの力を出すのです。「ほんとうに生きている」と感じるまで。
自分らしさ
自分の一生というのは、一個の「作品」だと考えることができます。生まれてから死ぬまで、自分という人間をどのように完成させるか、それがその人の「生き方」になると思います。
他人をあまり意識せず、「自分らしさ」をもっと出してもよいと思います。のびのびと自分らしく生きていけばよいと思います。
そもそも人と自分を比べることは、時間の無駄以外の何ものでもありません。毎日の生活を楽しみ、しなければならないことをし、自分よりも幸福だと思っている人たちとの比較をやめるなら、幸せは誰にでも訪れると思います。
“自分らしく”生きている人は、他人を羨んだり妬んだりするようなことはしません。“自分らしく”生きている人には、他人の話をよく聞いてあげたり、人の失敗をとがめないで許してあげたりするような、心の広さがあります。
“自分らしく”生きるためには、「人間は本来どのように生きるべきか」ということに目を逸らさずに考えていく必要があると思います。人が生きていくというのは、苦しいことも嬉しいこともいろいろあるものです。苦しいことに耐えなければ、 “自分らしく”生きることはできないと思います。
成功してもしなくても動じない気力があれば、別の道が開けます。あまりいろいろなことを考えずに、自分のするべきことにだけ心や力を注いでいれば、“自分らしく”生きることができます。
もし、“自分らしく”生きられないと感じたら、何かへ貢献できることを探してみればいいと思います。周囲へ貢献したときに、人は必ず幸福になれるからです。人を喜ばせ献身できたとき、自分の中に何か光り輝くものが生まれるからです。
そして、自分の生きる目標をはっきりと自覚し、自分の生きている必要を信じ、その目標に向かって全力をそそいでいれば、“自分らしく”生きていると感じられます。
基本にもどって
「子どもの成績が伸びない」と保護者の方が相談に来られます。成績の伸びない原因はさまざまですが、「原因のひとつに、基本練習を疎かにしていることがあげられます。基本をしっかり身につけて自由に使いこなせないまま、難しい問題を解こうとしているのです。まずは基本を完全にマスターすることです」と話すときがあります。
基本の繰り返し練習に取り組み始めた子どもたちは、みるみる成績を上げていきます。こういう例は実にたくさんあるのです。いかに基本が大切かということです。
ある年の12月24日午後5時。高橋一雄さんは、1か月前に行われたセンター直前模試の結果を受け取って呆然となりました。センター試験まで1か月を切っている時期に、化学の偏差値が38という成績だったのです。
それを見たときの血の気がサーッと引いていく感覚を、高橋さんは今でも覚えているそうです。焦りばかりが押し寄せてきました。とにかく勉強しなければと書店へ行きました。しかし、どの本を見ても難しく思えて「どうしよう」という状況でした。
そんなとき、ふと手にした本が“問題と解説”というシンプルな作りになっていました。高橋さんは、「こんな精神状態のときに読んでいてわかる」と思いました。本の表紙を見ると単なる「教科書ガイド」です。他の受験生なら、バカにして見向きもしないような本です。でも、高橋さんは読んでいてよく理解できるので、その「教科書ガイド」と20ページほどの薄くて小さな“ポイント集”を購入しました。
それからひたすら2週間、高橋さんはこの2冊だけをやり、最後には3時間でその「教科書ガイド」1冊の問題をすべて解けるようになりました。あとは薄い“ポイント集”を暗記しました。
そして、高橋さんはセンター試験の本番へ向かいました。さて、結果はどうだったのでしょう。自己採点ですが、なんと100点満点だったのです。
「あれだけ苦手であった化学が、基本をしっかりと固めただけで、すごく簡単に感じられるようになったんです」と高橋さんは振り返ります。
受験生の中には、自分の学力よりはるかにレベルの高い問題集を買い、知識があいまいなのに「受験生は皆これを使うから」と、気分だけで勉強をしている人がかなりいます。
「なにより基本が大切。一見遠回りのようでもコツコツとやるのが一番の早道ではないかと思うようになりました」と高橋さんは言います。
「達人」への道
みなさんは「達人」になりたいと思ったことはありませんか。「達人」とは、長年の訓練の結果、きわめて高い水準に達した人のことです。
そんなすごい「達人」を目指してみませんか。学び舎には、中学3年生くらいになると“学びの達人”になる人が現れます。
“学びの達人”なる方法を考えてみましょう。と言っても、学び方は人それぞれで、「これをすれば誰でも“学びの達人”になれる」という方法はありません。自分にぴったり合った学び方は、自分自身で見つける以外方法はありません。
心を込めて一生懸命勉強しているときに、勉強の仕方をいろいろ考えて工夫するでしょう。いろんな勉強法を試してみて、その都度工夫を重ねるうちに、よいアイディアが思いつきます。
誰もが簡単に「達人」になれるわけではありません。険しい道のりを歩まなければ、「達人」にはなれないのです。だから、尊いのです。
人生の「達人」になることにも挑戦しましょう。
世の中には、自分の都合のいいように、相手をああしてやろう、こうしてやろうと考える人がいますが、やはりそういう邪心(悪いことをたくらむ気持ち)を持った人は、偉大なことができる人間にはなれません。
偉大なことをやり遂げる人と言うのは、その時その時を一生懸命に生き、思い切って行動できる人です。
たいていの人は、自分の感情をコントロールすることができずに、感情に流されて動いてしまったり、何か問題が起きるとドタバタしてしまったりして、結果的に悪い状況になってしまいます。
しかし、周りの人が興奮しているときでも、自分に危険が差しせまった苦しい状態のときでも、冷静でいられる人、いつもと変わらず落ち着いて行動できる人がいます。そういう人は人生の「達人」になれると思います。
「笑う門に福来たる」ということわざがあります。「苦難な状況にあっても希望をもって頑張れば、幸せをもたらすことができる」という意味です。笑っていると自然とプラス思考になります。プラス思考になると、いい考えがどんどん浮かびます。そして、たとえ何か問題を抱えていたとしても、解決策が心の中に現れてきます。
ところが、マイナス思考でいると、悪い考えばかりが頭の中を支配して、どんどん気持ちは後ろ向きになってしまいます。ですから、いつも笑える人でいることはとても重要なことであり、たとえ笑えるような心持ちでなかったとしても、そうあろうと努めることはとても大切です。
人間を向上させるのは、
①生活であり、
②行動であり、
③人間性(人が生まれつきもっているあたたかい気持ち)
だと思います。
どこにいても、何をしていても、心をこめて取り組んでいれば、人間は向上します。生きている日々には、いろいろなことが起こります。「今日はよい日だったな」と感じることもあれば、「今日は辛い日だったな」と思うこともあります。でも、楽しい経験も苦しい経験も、大事なものと受け止めて生きていくことで、人間は向上します。今やるべきことを一心(集中して)に行い、今を大切に生きることで、人間は向上します。