[寄稿] 夢を叶える 京大法学部から憧れの弁護士へ
学び舎通信 80
あけましておめでとうございます
新しい年が始まりました。みなさんの今年の抱負(心の中にえがいている計画や希望)は何でしょうか?
夢や希望をもって生きていると、毎日の生活が生き生きします。気持ちに張り合い(やりがいを感じること)を持てます。
小さな夢や希望なら、少しの努力ですぐ実現するかもしれません。しかし、大きな夢や希望となると、実現させるのに多くの努力が必要です。長い時間をかけて、努力を積み重ねていかなければ、心にえがいた夢は現実のものになりません。
昨年の秋、自分の夢を見事に実現させた人がいます。みなさんの先輩にあたる人です。昨年の暮れ、彼女が帰省した折に、「学び舎の子どもたちのために何か書いてほしい」と頼みました。
元旦の朝、彼女は原稿を届けてくれました。
夢を叶える方法
みなさんは、「夢」を持っているでしょうか?
私は、久保先生の教え子で、司法試験に合格し、今、弁護士の卵として研修を受けている者です。私の夢は、弁護士になることでした。そこで、みなさんの先輩として、実体験に即して、夢を叶える方法についてお話しさせて頂きます。
まず、夢を持とう
みなさんは、将来どのような職業に就きたいでしょうか?
仕事というのは、お金をもらうためだけにするものではありません。だって、大学を卒業して60歳になるまで、朝早くから夜遅くまで、人生の大半を仕事に費やすわけです。それなら、自分がやりたい仕事をする方がいいに決まっています。さらに言えば、私は、みなさんに、仕事を通して社会の役に立とう、という意識を持ってほしいのです。
ただ、どんな仕事も社会の役に立っています。サラリーマンと総称(同じ種類のもの全体をひとまとめにして呼ぶこと)される職業も、具体的に見れば、社会の役に立っています。例えば、勤め先の会社が家電メーカーで営業担当をしている人なら、便利な家電を買うことができる市場(品物の売り買いをしたり、取引をしたりする所)を作るのに貢献(何かのために力をつくして役だつこと)しているわけです。だから、仕事を通して社会の役に立とうという意識自体が大切なのだということを心に留めておいて下さい。
話をもとに戻して、自分がやりたい仕事って何だろう。世の中には、たくさんの仕事があります。時間があれば、『13歳のハローワーク』(村上龍/幻冬舎)を読んでみることをお勧めします。ここには514もの職業が載っています。きっとみなさんがやってみたいと思う仕事があるはずです。
私は、困っている人々を助けたいという気持ちで、弁護士を選びました。
弁護士は、借金を抱え苦しんでいる人、離婚したいけどパートナーと上手く話し合えない人、交通事故に遭って相手方に賠償金を支払ってもらいたい人、無実の罪で捕まっている人等、人生の大問題に直面して相談に来られる人を、法律を用いて助ける職業です。人の人生を左右する問題を扱うので、責任は非常に重いですが、問題が解決し、相談に来られた人に感謝されると、何物にもかえがたい喜びを感じることができます
夢を持ったら、動き出そう
やりたい仕事が決まったら、そのために今から何をすればいいのでしょうか?
例えば、家を建てることに興味があるから建築関係の仕事に就きたいと思った場合、建築学科のある大学に入る必要がありますよね。建築学科が有名な大学には、建築分野において優秀な教授や先輩がいますから、他の大学に比べ、より深く建築を学べる環境が整っています。
建築に限らず、往々にして、偏差値(その人の学力が、全体の中でどの程度の水準にあるかを示す数値)の高い大学には、優れた教授や先輩がいるので、みなさんの就きたい職業に直結した勉強ができる環境が整っているのです。
偏差値の高い大学に入りたい、ではなく、自分の夢を叶えられるための大学に入りたい、だから、その大学に行けるような勉強ができる高校に入るのだ、そういうプロセス(物事を進めてゆく方法。手順)で考えて下さい。そうすれば、今やるべき勉強をしっかりやることが、夢への一番の近道なのだと気付くはずです。
計画的にコツコツやる者が最後に勝つ
今やるべき勉強をしっかりやる、口で言うのは簡単だけど、なかなか実行するのは難しいものです。
人間なので、ついつい誘惑に負けて遊んでしまうときも、一生懸命やったのに結果がふるわずやる気をなくしてしまうときもあると思います。
そこで、夢を叶える、という大きな目標の次に、中くらいの目標、小さな目標を設定しましょう。例えば、「○○高校に入る」というのが中くらいの目標、「次の定期テストで英語○点以上取る」が小さな目標という具合にです。そして、小さな目標を叶えるために、毎日の課題を考えましょう。1日15個新しい単語を覚える、英作文を5問解く、等です。
これらを計画的に行えば、成績は必ず伸びます。もし、成績が伸びなければ、毎日の課題が少ないか、集中力が足りなくて身についていないので、その点を改善しましょう。
日々の積み重ねこそ、実を結ぶのです。かくいう私は、司法試験前の2年間は、平日は朝8時から夜12時まで、休日は朝10時から夜6時まで、毎日「今日はこの課題をやる」と決めて、食事・トイレ以外、ずっと勉強していました。全くの凡人(ふつうの人)の私が司法試験に合格できたのは、まさしく計画的にコツコツやった結果です。
夢は大きく、ハングリー精神を
みなさんの将来は無限の可能性を秘めています。やりたい仕事を選ぶときに、「自分には難しすぎるから。」なんて思って挑戦する前に諦めることだけはしないで下さい。私も、弁護士になりたいと相談した時、京都大学に行きたいと相談した時、親に絶対無理と反対されました。でも、行きたい大学にも行けましたし、弁護士にもなれたわけです。挑戦もせず、努力もしないで、自分の手の届く範囲の高校・大学に進学し、漫然(特に目的や考えもなく、ぼんやりしているようす)と内定(正式の発表の前に内々に決まること)をもらえた会社に就職する人生でいいのでしょうか。
人生は一度きりで、挑戦すべきステージは限られています。ならば、悔いのないように、大きな夢を持って、そのために精一杯努力すべきです。叶わない夢はありません。みなさん、頑張って下さい。
夢へのステップ
上記の文章は、Yさんに書いてもらいました。私の「教え子」とありますが実際に彼女と一緒に勉強したのは、ほんの一時期のことです。Yさんは、自分で自分の道を切り拓いていったのです。
Yさんは、1998年に地元の公立小学校を卒業しました。智辯学園和歌山中学校・高校を卒業後、2003年に京都大学法学部に現役(高校在学中の大学受験生)で入学、2007年に京都大学大学院に進学しました。
司法試験の合格通知が届いたのは、2009年9月。長い間の努力が実を結びました。Yさんから電話で朗報(うれしい知らせ)を知らされたとき、胸に熱いものがこみ上げてきました。
途方もない夢をいだき、長い坂を一歩一歩登り詰めて、つかんだ夢なのです。
Yさんは”まず、夢を持とう”の中で「仕事というのは、お金をもらうためだけにするものではありません」、「自分がやりたい仕事をする方がいいに決まっています」、「仕事を通して社会の役に立とうという意識自体が大切なのだということを心に留めておいて下さい」と書いています。つまり、彼女の夢は「自分がやりたい仕事」であって、「仕事を通して社会の役に立つ」ことなのです。素晴らしい夢です。
現在、裁判所や弁護士事務所や検察庁などで研修を受けているそうです。「人の人生を左右する問題を扱うので、責任は非常に重いですが、問題が解決し、相談に来られた人に感謝されると、何物にもかえがたい喜びを感じることができます」と、その感想が述べています。
“計画的にコツコツやる者が最後に勝つ”では、自らの体験を通して毎日の勉強のアドバイスが書かれています。その基本は「今やるべき勉強をしっかりやる」です。「夢を叶える、という大きな目標の次に、中くらいの目標、小さな目標を設定しましょう」と、まず毎日の小さな目標を達成することの大切さを語り、それを「計画的に行えば、成績は必ず伸びます」と断言(はっきりと言い切ること)しています。ふつうの人が成功する方法は、「日々の積み重ね」、「計画的にコツコツやること」であると強調しています。
最後に「人生は一度きりで、挑戦すべきステージは限られています。ならば、悔いのないように、大きな夢を持って、そのために精一杯努力すべきです。叶わない夢はありません」と励ましの言葉を送っています。
みなさんの毎日の勉強が夢へのステップなのです。