卒業生からのメッセージ 2022 善く生きるための知恵
自分の可能性
「自分はどれだけのことができるのか」。それを知っているのは、他人に頼らないで自分の力で生きている人だけです。他人の目を気にして、「自分は社会でちっぽけな存在だから、何の価値もない存在だから、役に立っていないから」と卑下したり、「自分は何もできない、やってみたいことはあるけれど自分には無理だ」と考えたりするのは良くありません。
視野を狭めると、自分の可能性が閉じてしまいます。生きていくための選択肢は無限にあります。自分の頭で考え続け、想像し続けていれば、選択肢も可能性も広がって、溌剌と生きることができます。
「機械がやってくれたら便利だろうな」と考えると、自分の筋肉や反射神経や脳機能が低下します。便利な機械に頼らずに、自分の体を動かし、自分の心を働かせて、主体性を持つと、力が湧いてきます。
30代で脊髄損傷を患って下半身麻痺となり、足が動かない状態となった人がいました。この時、再び元気に歩けるようになるとは誰も思いませんでした。しかし、元通りに回復し、歩けるようになりました。その人は自分の体に、「大事にするから、一緒に頑張ってね」という言葉をかけ続けました。「一緒に頑張った」と思うと治ったそうです。「いつも使わせてもらってありがとう」と自分の体をいたわる気持ちが、快復の可能性を引き出したのだと思います。
善く生きるための知恵
学ぶということは、人から与えられた課題をロボットのように黙々とすることではなく、自分で課題を見つけて粘り強く正しく考えることです。学ぶときに大切なのは、学んで得る知識よりも、学ぶことを通じて身につける善く生きるための知恵です。
社会で高く評価されるのは、自分が取り組むべき課題や問題を自分で見つけられる能力です。受験勉強では、与えられた問題を解く能力が重要ですが、問題集ばかり勉強してきた人が、社会に出て、「人に言われる前に自分で考えてやれ」と言われて、どうしてよいか分からず途方にくれることがあります。学校の成績が優秀であっても、人から言われたことをこなすだけの人は、「指示待ち人間」と言われます。
大きな仕事を成し遂げた人は、例外なくその人独自の方法、その人に最も合った方法を編み出しています。頭脳を働かせて、自分の遣り方を生み出して、行動する方が目的に早く到達できる場合が多いです。「できない」と言う前にまずやってみるのです。
一所懸命していたことが失敗したら、誰でも意気消沈します。しかし、「もうだめだ」と思って諦めてしまうと、今までの努力は水の泡です。失敗は成功へ至る道標になります。投げ出してしまわずに、「なぜ失敗したのか」、「なぜうまくいかなかったのか」を考え続けていると、成功への道が開けます。
人生には運不運はつきものです。何をやってもうまくいかないときはどんな人にもあります。そんなときでも捨て鉢にならないで、学び続けていれば、善く生きるための知恵が生まれます。
中学3年間で学んだこと
Kさん
中学3年間で、辛いことや苦しいことや嬉しいことがたくさんありました。その中で、「何事も諦めないで頑張り続ける努力の大切さ」を学びました。
中学に入学して、学び舎に通い始め、バスケットボール部に入りました。始めは頑張ろうという気持ちでいっぱいでしたが、途中で全てのことを諦めたくなるような出来事がありました。バスケットボールの練習をしていたときに骨折してしまったのです。それ以来、「何をやっても失敗ばかりだ」と感じるようになり、勉強もやる気が出ないようになりました。
部活も勉強も、どんどん成長していく同級生にとてつもない焦りを感じ、自分とみんなの差が大きくなるような気がして、とても不安になりました。
2年になっても不安が消えておらず、「どうしたら良いのか」悩んでいましたが、毎日一生懸命頑張っている後輩を見て、「自分も負けていられない」と強く思いました。その日から、毎日自宅の前でボールをついて「どうすれば上手に動くことができるのか」を考えました。努力をずっと続けていると、顧問の先生に副キャプテンになることを勧められました。
3年生になり、「受験勉強をどうすればよいか」が分かっていなかった私に、久保先生が「毎日学び舎に来るといいです」と言ってくれました。それから毎日学び舎に通い続けました。すると、自然に勉強に対する意欲が湧いてきました。学校の実力テストでは数学で学年2位の成績を取ることができました。
「辛いことや苦しいことに耐えて頑張ると、辛さや苦しさは良い記憶に変わるんだ」と知りました。