卒業生からのメッセージ 2022 自分に正直に生きる
自分に正直に生きる
アメリカ・マサチューセッツ州コンコードの森にウォールデンという湖があります。今から約180年前に、ヘンリー・ディヴィット・ソローはその畔に小屋を建て、2年2か月間独りで暮らしました。そして、森での簡素な暮らしを、新しい生き方への提案として、『ウォールデン―森の生活』を書きました。
ソローが森で暮らすことにしたのは、「思慮深く生き、人生の本質的な事実だけに向き合いたい」と思ったからです。ソローは、「森での暮らしから何か学ぶことができないだろうか。死ぬときに、自分は本当に生きていなかったと思いたくない。人生とは言えないような人生を送りたくはない。ぎりぎりまで自分の人生を諦めたくない。生きるということは、それほど大切なものなのだ」と考えました。ソローはウォールデン湖畔の森で素朴で厳格な生活をして、人生の真髄をすべて吸収しようとしました。
正しくよく行うには、どうすればよいかを学ばなければなりません。それと同じように、正しくよく生きるには、どうすればよいかを学ばなければならなりません。よく生きるということは、自分に正直に慎重に生きることです。社会の賞賛を得られなくても、悪い評判を立てられても、自分に正直な生き方をしていれば、不幸ではありません。自分に正直に生きようとする努力が、幸福を与えてくれます。
自分の命を充分に生きる
人生そのものは、善いものでもなければ、悪いものでもありません。しかし、生き方次第で、人生は善いものともなれば、悪いものともなります。
二度とない、すぐに終わってしまう子ども時代は、人生の黄金期です。その時期に子どもに知識を教えることが大事なのではなく、知識を愛する心を育て、その心が発達したときに知識を学ぶための方法を教えることが大事なのです。これが教育の原則です。
子どもを愛し子どもを知ろうとする大人は、たえずほほえんでなごやかな心をもった子どもが楽しく遊ぶのを、好意をもって見守ります。こういう大人に育てられると、子どもは子ども時代を豊かに生きることができます。反対に、子どもが楽しむのを妨げ、苦く苦しいことでいっぱいにしようとする大人がいます。そういう人は、子どもが物知りになれば満足だと考え、子どもの競争心をあおり、順位を付けて、弱い人を押しのけて前に出ることを勧めます。
ある賢人は、「自分の命を充分に生きなかった人は死を恐れる。自分の命を充分に生きた人は死を恐れない」と言いました。人生の価値は、長さにあるのではなく、使い方にあります。長く生きても充実した人生を生きなかった人もいます。充分に生きたかどうかは、その年数ではなく、与えられた命をどれくらい自分の意志で生きたかにかかっています。
私たちは命を与えられて生きています。その命を正しく養うこと。心を穏やかに保ち、怒りや欲を抑え、心配事や悩みを少なくし、誠実で、静かに、思慮深く、理性的に生きるのがいいです。【久保誠章】
学び舎で学んだこと
Sさん
私は学び舎で、「計画を立てて勉強すること」、「一日の時間の使い方」、「自分で勉強を進めていくことの大切さ」を学びました。また、自分から先生に質問したり、自分から勉強に取り組めるようになったりしたのも、学び舎で勉強したからだと思います。
心が落ち着く学び舎の教室で、先生や他の子たちと勉強すると、とても集中できるようになりました。分からないところや難しいところを先生に聞くと、丁寧に教えてくださるので聞きやすかったです。
中学3年になったとき、久保先生は、「規則正しい生活をして、努力してたくさん勉強することが大切です」と言われました。クラブをしていた頃は疲れて「学校や塾の宿題をするのが面倒だな」と思ったことがありましたが、「自分でやろうと思った範囲はきちんと仕上げよう」と心掛けて毎日頑張りました。
受験が近づくにつれて、不安になったり、緊張したりすることが多くなりました。先生は、「周りのことは気にせずに、常にマイペースで勉強していると自然と落ち着いてきます」と言われました。受験会場でも、久保先生のこの言葉を意識して受けました。
その結果、私立高校と公立高校のどちらも志望校に合格することができました。自分の行きたい高校に合格できたのは、最後まで頑張って勉強したのもありますが、久保先生から勉強以外のことを学んだからだと思います。「努力すれば自分の思い通りの結果になるとは言い切れないけれど、『努力して頑張ったことは必ず自分のためになる』のは確かだ」と思います。こういうことも私は学び舎で学びました。