夢を実現するために 大阪教育大学へ
学び舎通信 95
「学び方」を学ぶ
学び舎で真面目に勉強に取り組んだ人は、自分の勉強法を見出しています。そういう人は、高校に入学後、自分一人で勉強を進めています。大学を受験するときも、予備校に通わずに、国公立大学や関関同立に合格しています。「学び方」を習得した子どもは、自分の力で勉強できる人に成長しています。
大切なのは、「学ぶ」というプロセス(方法)を身につけることです。一度「学び方」を学んだ子どもは、そのあとは、一人で学んでいけます。真面目さと素直さのある子どもは、一生懸命勉強することで「学び方」を身につけることができています。
真面目に取り組むことで道は開かれる
そんな一人にS君がいます。S君は、この3月に志望校の大阪教育大学に現役で合格しました。S君は、小学4年生の時に学び舎で学習を始めました。そして、中学3年生までの6年間、こつこつ勉強しました。
S君が小学6年生の頃、お母さんから「息子は学校の先生になりたいと言っています」と聞きました。私は「教師を目指すのならば、岸和田高校に行って大阪教育大学に進むのがいいでしょう」と言いました。S君はするべきことを一つ一つしっかりする子どもでした。私の出した課題(宿題)を毎回完全に仕上げていました。そうすることで、着実に学力を伸ばしました。
3年前の春、S君が岸和田高校に合格した時、
私は「おめでとう。夢に一歩近づけたね」と言いました。そしてこの春、S君から「大阪教育大学に合格しました」という嬉しい知らせがありました。これで夢への階段をまた一段上ることができました。真面目に勉強したことが、自分の進む道を切り開く力になったのだと思います。
S君は、学び舎の後輩たちにメッセージを書いてくれました。それを紹介します。
夢を実現するために
私はこの春、自分の志望校に合格することができました。教師になるという夢の実現に、また一歩近づくことができたのです。そして今回、みなさんに夢を持つことの大切さを伝えようと思い、この文章を書くことにしました。
私は小学生の頃に「学校の先生」というものになりたいと思い始めました。何故そう思ったのか、今は覚えていませんが、中学生になっても変わらず「教師」という仕事を目指していました。
教師になるにはどうすればよいのかを知らなかった私は、教師になるための方法を調べました。教師になるにはまず、教員免許というものを取得する必要があるということを知りました。教員免許を取るには大学に行くといいということもわかりました。では、その大学に行くにはどうすればよいのか。そういうことを考えて、自分の夢を叶えるための過程を具体化していくことで、「自分がすべきことは、勉強なのだ」ということもわかりました。
当時、遊んでばかりで、成績も下がっていました。勉強するより遊ぶ方が楽しかったのですから。確かに、勉強が好きだという人はあまりいません。私もそうです。しかし、夢のためにやらなければならないということがわかってからは、勉強することが嫌なことではなくなりました。そして、おもしろいことに、勉強していろいろなことを知ることが楽しくなりました。
みなさんの中にも、勉強が嫌いな人が少なからずいることでしょう。それはおそらく、「自分が何のために勉強しているかわからない」からではないでしょうか。また、テストで良い点数をとるという、目先の目標のためにやっているという人もいるでしょう。しかし、そうではなく、もっと先にある「自分の夢」のために勉強するのです。みなさんも夢を持っているでしょう。その夢のために努力するのです。叶えたい夢があれば、努力は苦ではなくなります。
何をすればいいのかを知るには、自分の夢を叶えるための過程を想像してください。本やインターネットで調べれば、実際にどうすればいいのかを知ることができます。
まだ夢を持っていないという人は、今は勉強してください。小学校や中学校で学ぶことは、全て基本です。どのような夢を叶えるにも必要なことです。もし、自分が叶えたい夢を持ったときに、その基本がなければ、遠回りすることになります。
そして最後に間違えてはならないのは、自分の思い描いた過程の通りにうまくいかなくても、そこで終わりではありません。夢を叶える方法は、いくつもあります。失敗しても、違う方法でもう一度目指せばよいのです。将来、楽しく過ごすために、自分の夢には妥協せず後悔のないように「今」頑張ってください。
平常心でいるには
学び舎の卒業生には教師志望の学生が数名います。真面目に勉強に取り組んで学力を伸ばしていった人たちです。教育現場での活躍を期待します。
彼らが中学生の時、私はよく「どんなときでも、『平常心』でいることです」と言いました。
「いまは調子が良くないときだな」と思っていても、「調子が良くないとき」はなかなかうまくいかない時期ですから、結果を求めず力を蓄えることを考えるといいと思います。
イチロー選手は、そういうことを実行しています。
イチロー選手にも普通の人と同じように、必ず「調子の良いとき」と「調子の悪いとき」があります。ときにはスランプだと感じることもあるでしょう。でも、イチロー選手の場合、「良いとき」と「悪いとき」の”上”と”下”の差が小さく、明らかにほかのプロ野球選手に比べて、はるかに精神の状態が安定していることがわかります。
それは、力を発揮できるときと、発揮できないときを自分で把握し、焦ることなく日々の習慣であるルーティン(日常の決まりきった仕事。日課)を守って練習しているからです。
イチロー選手は、自分の調子に関係なく、「試合開始の何時間前には球場に入り、何時間前から練習を始め、バッターボックスに入ったらこうパフォーマンスをする」という一連の流れをルーティン化しています。調子がいいからといってルーティンを省略したり、逆に調子が悪いからと何かをつけたしたりすることはありません。
それはたとえ結果が出ないときでも、ルーティンを守っていれば、いずれはいつもどおりのリズム(調子)に戻れることを確信しているからです。
自分のリズムを理解している人は、だれかを妬んだり、意味もなく焦燥感(あせっていらいらする気持ち)にかられたりすることはありません。そのうちに自分にもチャンスが来る、という自信が根底に根付いているからです。
希望や夢が抱けないから、人は不安になったり、焦りを覚えたりして、つい他人と比べてしまいます。しかし、やがては自分も開花するときが来るということが知っていれば、そんなに心配することがなくなります。
子どもの「生活リズム」は親がつくる
子どもにとって、「生活リズム(調子)」を整えることが大切です。
子どもは自分で「生活リズム」をつかむことはできません。ですから、親がしっかりと子どものリズムやその特徴を把握しながら、生活のペースを合わせて働きかけてあげましょう。そうすれば、子どもは自分らしく、安定したリズムで生きることができるようになります。
「規則正しい生活」は、健康面にとって大切であることは言うまでもありませんが、なにより子どもの気持ちを安定させるためにきわめて重要です。
朝は何時に起きる→トイレに行く→着替える→ご飯を食べる……などの「日課」が、子どもにとって
のルーティンです。子どもの潜在意識(心の奥にひそんでいる考え)は、安定した行動パターンを続ける中で、本人にとってもっとも力を発揮しやすいリズムを獲得していきます。
親の目から見て、「なんとなく調子が悪い」と感じられたときは、とくにルーティンを淡々とこなせることに気をつけてみてください。そうすれば、それ以上、子どものリズムが乱れることはなくなります。
逆に親の都合で夜更かしさせたり、毎日バラバラの時間に行動を取らせるようになると、子どもの心は不安定になり怒りっぽくなったり、突然泣き出したりするなど、コントロール不能状態に陥りがちになります。
幼い子どもは心が未熟であるからこそ、毎日のルーティンを守った生活をさせることが大切です。
勉強するのにも、ルーティンは重要です。頭を使う人は、毎日、判で押したように同じことを繰り返すような生活をしています。約200前のドイツの哲学者、カントは毎日決まった時刻に散歩をしていました。町の人たちは、カントが家の前を通るのを見て、時計を合わせていたと言われています。
生活環境を整えることは、身体や心の働きにとって大切です。睡眠のリズムや食事の内容を整えることは、学習の効果を上げるための前提(ある物事が成り立つための条件)です。学習そのものよりも重要なことと言ってよいくらいです。