家庭環境と子どもの育ちかた

学び舎通信 136

目次

英語の学び方

英語を理解し使えることは、これからますます重要になってくると思います。

日本人が英語を真剣に習得するつもりであるならば、まず、母語である日本語力を鍛える必要があります。そして、「基本の反復練習」で、英語の型を身につけるのです。

まず、日本語力を鍛える。「日本人は英語が下手なのは、日本語が下手だからだ」と言われています。外国語を習得するうえでいちばんの近道は、実は、母語である日本語の基礎をしっかり勉強して言語能力を養うことなのです。日本語の本を読まない子どもが、英語の文章を読めるはずがありません。日本語で作文が書けない子どもが、英語で作文を書けるはずがありません。丁寧な言葉遣いで日本語を話せない子どもが、英語を話せるはずがないのです。

英語で英語を教える「英語漬け」などという幻想を抱くのでない限り、日本人は、日本語で英語を学び、日本語で論理的に考え、基本を定着させていく以外方法はありません。

英語をある程度まで習得できたとしても、英語を使って発信する中身、つまり主張や思想は、やはり日本語で獲得し、日本語で蓄積しています。英語を習得する過程でも、実際に英語を使用するときでも、日本語の能力が決定的となるのです。

英語を習得する方法は、音楽やスポーツと似ていて、一定の「型」を身につけることが第一歩です。そのためには、英語を聴いたり、発音したり、読んだり、書いたりしながら、「基本を何度も繰り返して身体に刷り込む」ことが、効果的な学習法なのです。

賢い子どもを育てる

テストの点数だけで、子どもの能力を決めつけてはいけません。テストの点数が良くなくても、優秀な子どもはいます。大人は、テストの点数ではなく、子どもそのものを見なくてはならならないのです。ところが、テストの点数が良くないと、この子はダメな子と決めつけてしまう困った親や教師がいます。

中学くらいの内容なら、真剣にテスト勉強すれば、ほとんどの子どもはすぐにテストの点数を上げることができます。テストの点数が良くなると、子どもも親も「賢くなった」と錯覚します。しかし、テストの点数と賢いこととはイコールの関係ではありません。一生懸命テスト勉強したから、テストの点数が良くなったのです。

中学生がテストの点数を上げるのは、それ程難しいことではありません。わたしのアドバイスを実行している子どもは、高得点を取っています。

点数を取らせるための学習法を子どもたちに強制する塾があります。

しかし、そういう学習法では、「賢い子ども」には育ちません。点数は取れても、頭のよい子どもには育たないのです。また、定期テスト前に過去問をコピーして中学生にさせる塾もありますが、そんなことをするのは卑怯だと思うから、わたしは一度もしたことがありません。「ここが出そうだ」とか「ここをしっかり勉強しておくように」ということもほとんど言いません。中学の成績は、授業中に先生の説明に集中し、どれだけ重要なポイントを押さえられるかで決まります。どの授業もそうですが、先生の話をよく聞いている生徒は、どこがテストに出るか予想がつきます。

自分で推理する力、工夫する力、組み立てる力を、養うことで、「賢い子ども」になれるのです。

難しいのは、テストの点数を上げることではなく、自分で勉強でき、自分の道を切り開くことのできる、本当に賢い子どもになることなのです。みなさんは、このことに挑戦しているのです。

学び舎で真面目に取り組んだ子どもたちは、自分で勉強し、自分の道を切り開いて、志望校に入学しています。だから、高校で学力が伸びるのです。

「やる気にさせます」と言いません。「やる気のある人だけ来てほしい」。宿題をやらなかったからといって叱りません。何事も人のせいにはせず、主体的に判断し行動できる人になってもらいたいからです。自分のやったことの責任を取れる人、自分のやらなかったことの責任を取れる人になってほしいのです。

世の中には、実力の伴わない見かけばかりの強がりを言う人がいます。また、悪いことをして、威張っている人もいます。恥知らずでやかましく叫び、図々しく自分の考えを通すような人もいます。

しかし、世の中には、清らかに生きようと努め、つつしみ深く、自分の仕事に専念している人がいます。こういう人が、「賢い人」なのです。

家庭環境の大切さ

「子どもにやる気を出させるにはどうすればいいですか」と、よく訊かれます。

家庭学習の時間を増やすには、家庭環境を充実させるのが一番です。家に本棚があり、テレビの視聴時間が少なく、読書の時間が多く、小さい頃には読み聞かせの習慣があり、そして、親子で山や川や海で自然体験をよくする、そういう家庭で育った子どもは、家庭での学習時間が長く、しかも学力が高いことが、教育学者の研究で明らかになっています。

小学生低学年のうちから1日3時間以上テレビを見たり、1日に2時間以上コンピュータゲームをしたりする子どもは、学力が伸び悩み気味になります。また、粘り強さがない傾向にあります。

テレビやスマホなどのゲームを長時間する子どもは、受け身的な学習態度になってしまうことがあります。頭を能動的に使うことが苦手なのでゲームをするのか、ゲームをする時間が多過ぎるから脳が活発に動かないのかは定かではありません。しかし、テレビをよく見ている子どもの学歴は低く、学力も高くないことがわかっています。また、テレビの視聴時間が長すぎると、幼児の知能の発達に支障をきたすと小児科の多くの医師は警告しています。

子どもが勉強する近くに、障害物となるテレビ・スマホ・ゲームなどの遊び道具を置いておかないようにしましょう。勉強する場所には、本棚をおくようにしたいものです。読み物、図鑑、辞典、教科書、ノート類が近くにあれば、いつでも調べることができます。勉強しないときでも、本の背表紙のタイトルをいつでも見ることができるようにしておきます。そうすると学びに対する興味や関心が知らないうちに起きてきます。

本読みをしたからといって、すぐにテストの点数につながりません。しかし、本を読むことが、勉強の基礎になるのです。

It’s so easy.

数学者の藤原正彦さんは、“It’s so easy.” と口に出してから難問に取り組むそうです。そう言ったからといって必ず解けるわけではないらしいのですが、解けるか解けないかは気にせず、次も “It’s so easy.” と言って取り組みます。みなさんも算数や数学の問題を解くとき、「わたしには解ける」と言ってから解き始めるようにするといいです。

野球でも「速い球が来る」と思っていると、体がこわばって手も足も出ないということがあります。「このくらいの球なら打てる」と思って臨むと結構、体が動いて打てる。そういう意味では、体のこわばりと心のこわばり、頭のこわばりは関連しているような気がします。だから、問題を解く前には、「自分には解ける」「こんなのは簡単だ」と自分に言い聞かせてから、始めるのがいいかもしれません。実際に声に出したり、「絶対に解いてみせる」と書いてみたりと何か行動を伴うことをするいいと思います。

勉強するということ

「勉強する」ということは、どういうことなのか考えてみましょう。「勉強する」とね、目には見えないけれど、「自分が成長する」のです。勉強する前の自分と勉強したあとの自分とでは、勉強したあとの自分のほうが、少しだけ“世界”のことを理解したことになります。“自分にとっての世界”が広がるということです。

山登りにたとえてみましょう。山道を登っていくのは辛い。でも、高く登れば登るほど、遠くの景色まで見渡せるようになります。それが“自分にとっての世界”。辛いけれどももう少し登ってみると、その分だけ“世界”が広がります。遠くの方に川が見えたり、海が見えたり、山が見えたりします。でも、全部は見えません。そうすると「その先はどうなっているのかな」と気になります。その先が気になるから、辛いけれど、もう少し山を登ってみます。そうやって“見える世界を広げていく”ことは、まさしく「自分自身が成長する」ということなのです。

遠くの世界をただ眺めるだけではなくて、身近な生活の中でもたくさんの発見ができるようになります。例えば、化学という学問を勉強すると、おふろのお湯も、空から降ってくる雪も、自分の体を流れる血液にふくまれる水分も、全部H2Oという物質であることがわかります。また、みなさんが人の体に興味を持って、勉強して、「子どもは夜寝ている間に成長する」ということがわかれば、「早寝早起き」の意味もわかるでしょう。

勉強することが好きになると、毎日が発見の連続になります。「勉強して自分の世界を広げていく」ということは、とても気持ちいいことなのです。この面白さを知れば勉強が辛いことではなくなります。

だから、是非、みなさんも「勉強」という名の山登りを、楽しんでほしいと思います。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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