読解能力を養う やる気が力の源
学び舎通信 186
子ども時代に身につける力
小学・中学時代に身につけておかなければならない生きる力を学ぶ機会を持たない子どもがいます。
進学塾へ通ったり、家庭教師を付けたりして、無駄な勉強を強いられている子どもは、自立した大人になるための大切な時間を犠牲にしています。そして、本当の思考力の育成とは無縁な勉強に明け暮れる異様な子ども時代を過ごしています。成長期に睡眠時間を削って深夜まで勉強して、やっとの思いで志望校に入ったところで、まともな大人にはなれません。無理に無理を重ねて頭の良い子どもの仲間に入ったとしても、すでにエネルギーの大半を使い果たしているために社会に出たときは、抜け殻同然で自立心のない意志薄弱な大人になるばかりです。
論理的思考力のある子どもは、そんな愚かな勉強をしなくても、地道な努力と独自の工夫で、優秀な成績を収めることができます。その余裕と経験が、実社会において、実力を余すことなく引き出します。
どこの学校に入学できるかは、ある程度の学習量と知識が必要ですが、決め手となるのは、論理的な読解能力と推理力です。文章を読んで内容を理解する力と、分かっていることをもとにして、まだ分からないことを「こうではないだろうか」と筋道を立てて考える力のある子どもは、学力を伸ばします。
読解能力を養う
灘校などの有名私立中高一貫校の入学試験に合格するには、小学6年生で高校3年生程度の読解能力が必要です。灘高の東京大学合格率が高いのは、教育方針が良いからでも教師の質が高いからでもありません。12歳で教科書や参考書を読めば分かる能力を持っている生徒が、多く集まっているからです。
ある調査で、中学校を卒業する段階で約3割の生徒が基礎的な読解能力を身につけていないことがわかりました。また、その調査で、読解能力と進学できる高校の偏差値との相関関係が極めて高いこと、そして、読解能力は中学生の間は平均的に向上し、高校生になると向上しないこともわかりました。
読解能力を養うにはどのようなことが有効なのか、それを解明する科学的な研究は、今のところありません。今、皆さんにできることは、中学校を卒業するまでに、学び舎のテキストや学校の教科書を読んで、書かれていることを理解する力をつけておくことです。読解能力や基礎的な素養の発達は、15歳前後で止まってしまうかもしれないからです。
読解能力は、国語の問題集で読解問題を解いても、多くの本を読んでも、速く読んでも、身につきません。読解能力を養う最善の方法は、日常生活で文章を読み落としなく正しく理解して読む習慣をつけることです。多読や速読よりも精読を心掛けることで、文章の内容を読み取る力を作り上げることができると思います。そして、ゲームやスマホなどのモノに頼らない、手先や身体を動かす遊びや自然の中での遊びが、読解能力を身につける基礎になります。
やる気が力の源
中学校で行われる定期テストは、用語や解法を100%覚えれば、満点を取ることができます。プリントやワークを反復練習して、学習内容を暗記すれば、定期テストで良い成績が取れます。
小学生のうちからドリルに励んで、勉強した気分になり、テストで良い点数を取れることがあります。中学校でもドリルを繰り返して練習すれば、方程式のテストで満点が取れたり、英単語や漢字が覚えられたりしますから、ある程度の成績は取れます。しかし、それが成功体験となってしまうと、読解能力が不足していることに気づきにくくなります。
子どもの気持ちを蔑にして、大量のプリントを与えたり、たくさんの宿題を出したりして、短絡的な勉強法を強制する塾があります。しかし、付け焼刃の勉強法で一時成績が良くなっても、読解能力を身につけない限り、そこから先の学力は伸びません。細かい所まで注意してくわしく読むことのできる子どもが受験勉強に精を出し始めると、読解能力のない子どもの相対的な成績は下がる一方になります。
他人から課題を与えられるのではなく、自分で課題を探して新しいことに挑戦する、これこそが生きる力です。自分で自分の頭を鍛えるつもりで勉強するのです。読書でも勉強でもスポーツでも芸術でも、人からやらされていては、本当の力はつきません。 自分から「やるぞっ」という気構えでやれば、力を養うことができます。「やってやれないことはない」という強い心組みで、自ら進んでするやる気を出せば、成果は必ず上がります。