「脳の運動神経」をよくするには 鈴木孝夫さんの勉強方法

学び舎通信 78

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才能を作る

成績が良かったりすると、「あの子は頭がよい」などとよく言います。一方、テストの点数や学校の成績が良くないと、「わたしは頭が悪いのではないか」と思っている人がいます。

しかし、そんな簡単に「頭のよさ」を決めてしまっていいのでしょうか?学校の成績だけで「頭のよさ」は測定できません。今まで多くの子どもたちと接してきて思うことは、テストの点数や学校の成績が良いということと「頭がよい」ということは必ずしも一致しない、ということです。

では、「頭がよい」とはどういうことなのでしょうか?

何でも情報としてたくさん記憶できる、物事の要点をすぐに整理できる、人の言っていることをすばやく理解できるという人がいます。こういう人は「頭がよい」と言われます。しかし、それは厳密にいえば「頭がよい」のではなくて、「脳の運動神経がよい」だけのことなのです。脳の神経伝達が速いということです。

もうひとつは、「脳の運動神経」が鈍くて、勘も悪く、いわゆる鈍重(動作や反応がにぶくてのろいこと)という感じなのですが、「頭がよい」と言える人がいます。たとえばアインシュタインは一般的な意味では能力が低く、瞬発的な切れ味とか勘のよさとかという意味では鈍才(頭の働きガにぶいこと)だったと言われています。しかし、潜在的(表面には出ないで内部にひそんでいること)なところでいつも何かを考えている力がありました。

「頭がよい」には2種類ある

つまり、「頭がよい」には2種類あって、

ひとつは、脳の神経伝達速度が速いという、脳の運動能力の優秀さです。

もうひとつは、脳の運動能力は鈍いけれど、何か潜在意識の中で物事を考えている持続力みたいなものがあって、時間をかけて独創的なことを生み出す力です。

これももうひとつの「頭のよさ」です。しかし、残念ながらこの「頭のよさ」は学校教育の中ではよくわかりません。もの覚えがよくないし、試験の成績もあまりよくないからです。

大切なことは、どちらの「頭のよさ」も生まれつきのものではないということです。「脳の運動神経」も「時間をかけて独創的なことを生み出す力」も訓練によって伸ばすことができるということです。

「脳の運動神経」をよくするには

「脳の運動神経」のよい人は、学校で優秀な成績を取っています。「脳の運動神経」をよくすることは誰にでもできます。勉強する量を増やすことで、必ず頭の働きがよくなります。

あまり勉強に集中できなかった子が、あるとき「これからがんばって勉強する」と宣言しました。その言葉どおり猛烈(勢いがはげしいようす)に勉強し始め、めきめき力をつけています。こういうことは生活習慣をよくすることによって、誰にでもできることなのです。

勉強の成果(あることを行って得られたよい結果)は、やった時間ではなく、やった量で決まります。もう少し言い換えると、勉強をやった量ではなく、頭に残した量が重要なのです。

もう一度言いますと、勉強は「やった時間」ではなく、「残した量(覚えた量)」で良い成果が出ます。1時間勉強して、勉強したことが頭にどれだけ残っているか、どれだけ覚えているかが大切なのです。

記憶を定着させるためには、復習が大事です。学び舎では、記憶を定着させるための「学習プログラム」を作っています。学び舎の課題をまじめにするだけで、中学校の定期テストで430点以上取れます。復習を3回以上して解き方を完全に身につけた人は、450点以上取れています。テストの点数は勉強した結果の努力点です。100点の人は100点分の勉強をしているのです。50点の人は50点分だけの勉強しかしていないのです。

必要な時に必要な量をこなせば必ずできるようになるのです。忘れずに復習をして、覚えた量を増やしていけばいいだけなのです。

「頑張って勉強したんだけれど、よくありませんでした」という人もいます。そういう人には「諦めないで頑張り続けてください」と言います。諦めないで「今度こそうまくいく」と信じて頑張り続けられる人は、当然、成功する可能性が強くなります。

全身を使って勉強する

言語学者の鈴木孝夫さんの『日本人はなぜ英語ができないか』という本にこんなことが書いてあります。

「現在多くの学生生徒が望む『英語で会話ができるようになる』、つまり何についても自由に話せるようになるためには、じつは殆どの人がいらないと思っている読書、つまり英語で書いたものを読むことも大切なのです。と言うのも、書いたものをたくさん読まなければ、まともな会話に必要な単語も適切な表現も覚えられません。しかもその際に音読すること、それも大きな声で繰り返し何度も読むことが、絶対に欠かせないのです。黙読(声を出さないで読むこと)だけでは決して進歩しません。外国語は頭でわかるだけではなく、積極的に口の筋肉を動かし、自分の声を自分の耳で聴き、そして書き写すことで手に覚えさせる、つまり全身を使って覚えるものだからです。

何しろ日本に暮らしていて、学校のわずかの時間で、英語が何とか使えるようになろうというのですから、授業以外のときも、いろいろな英語の文章を声に出して何度も読み、自分の声(発音)を耳で聴いて、次にそれを紙に書いてみる。そしてできればその文が自然と口から出るまで繰り返し言ってみる、といったことを熱心にやらなければ、結局は会話も上手になりません。」

鈴木孝夫さんの勉強方法

鈴木孝夫さんは、慶応義塾大学医学部を卒業(1947)した後、慶応義塾大学文学部も卒業(1950)しています。

外国語の勉強は「習うより馴れろ」と言われます。鈴木さんの英語の学習方法を見ていきましょう。

鈴木さんは中学高校時代から大学の英文科を出るまで、外国人に英会話を習ったことはありませんでした。当時は外国人の先生は一人もいなかったのです。そこで鈴木さんは、毎日『ジャパン・タイムズ』という新聞を隅から隅まで読みました。社説や一般記事はもちろんのこと、商品の宣伝から求人広告にいたるまで読みました。しかも声を出して読むのです。初めのうちは5,6時間かかっていました。しかし、馴れるにしたがって短時間で読み終わるようになり、口の動きも、初めとは比較にならないほど滑らかになりました。

同時にアメリカ占領軍のラジオ放送をできるだけ聞くように努めました。言葉の聞ける番組すべて聞くのです。ニュース、天気予報、牧師さんのお説教など英語が流れているときは、分かっても分からなくても聞きました。

「この私の例でもお分かりと思いますが、これまである程度、外国人と接触もせず、とくに会話も習わずに、自分一人で英語ができるようになった人々は、すべて自分なりに大変な努力や工夫をしているということです。ただ漫然(特に目的や考えもなく、ぼんやりしているようす)と英語ができるようになりたいと思って、会話学校に行ったり、テレビの語学講座を受け身の姿勢でぼんやり見たりしていては、絶対にできるようになりません。

最も大事なことは、自分はなぜ英語ができるようになりたいのかという学習の目的を、自分ではっきりともつことです。」と鈴木さんは書いています。

徹底的にする!

記憶力が良い生徒がいました。彼の勉強に使った本は学び舎のテキストとプリント、学校の教科書とワークだけでした。彼はそれらを完璧にこなしていました。テキスト・プリント・教科書・ワークの問題を何度も読んだり解いたりしていました。

何度も繰り返して解いた結果、知識として頭の中に勉強した内容がたくさん残ったのです。ですから、テストで100点や100点に近い点を取ることができたのです。当然、トップ校に楽々合格しました。テキストやワークにある問題を徹底的に勉強することで、基本から応用まで解けるようになったのだと思います。

真面目に勉強をしておいたほうがいい。真面目に徹底的に勉強すれば、自分がどんなやり方で一番覚えられるかがわかります。

大切なのは、それを成し遂げるという意志です。

Where there is a will, there is a way.

(意志あるところに道はあり)

本当に「よくなりたい」と思って、一所懸命勉強すれば、きっとうまくいきます。

「艱難汝を玉にす」ということわざもあります。「艱難」は大変な苦しみや辛抱、「玉」は立派なものや美しいものを誉める言葉です。人間は苦労することによって、立派に成長するという意味です。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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