子どもと自然

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子どもと自然

他人が作った玩具や遊具で遊ぶよりも、自分たちで工夫して遊びを作るほうが、はるかに面白いです。

昭和の頃まで田舎の小学生は野山を駆け回っていました。故郷の町は初夏にみかんの花の香りに包まれます。数軒の万屋(雑貨屋)があり、子どもの小遣いで肥後守が買えました。冒険心のある男子はポケットにその小刀を忍ばせていました。森のずっと奥に分け入って、秘密基地を作りました。木の枝や竹を削って遊び道具をたくさん作りました。

山や川に多くの生きものが棲んでいました。生きものと子どもは友達でした。小学校の近くにも清らかな小川がありました。澄んだ流れに入ると、小魚がとんとんとんとんと足にぶつかってきました。小学6年の理科の時間に生き物の解剖実験がありました。カエルやフナを捕まえてきて、「ごめんね」と言って、メスで腹を割いて体の中を観察しました。

子ども時代に、基本的な神経回路が作られます。その時に必要なのが、自然からの本物の刺激です。雨垂れや葉擦れやせせらぎや波の音などの自然の音は、豊かな幅広い周波数を持っています。また、山並み、川の流れ、浜辺、木や草花、岩や石など自然界の形を見ると、縦線も横線も曲線も様々な形や大きさがあります。画一化された都市空間と比べ物にならない情報が、自然界には豊富にあります。

五感を使う

脳が柔らかな子ども時代に、自然の中に身を置き、聞こえる音や見えるものを体の中に取り込めば、その自然からの豊かな情報が一生の宝になります。

自然での本物の体験は、体の奥まで生の情報が入って、脳神経の働きを活発にします。自然の中にいると、脳は五感を全て使って数々の情報を取り入れていきます。五感とは、目で物を見る視覚 、耳で音を聞く聴覚、鼻でにおいをかぐ嗅覚、皮膚で物に触れる触覚、舌で味を感じる味覚の五つの感覚です。山や川や海で、五感を使い、体全体で自然を感じると、生きていることに感謝の心が生まれます。

「花鳥風月」は自然の美しさを象徴した言葉です。花を愛で、鳥の囀りに耳を澄まし、風を感じ、月を眺めていると、風流で、心が豊かになります。

多く食べるより少なく食べるほうが快いです。電子音より鳥の声や虫の音や風の音が心地よいです。ビルより山や森の風景を眺めるほうが落ち着きます。本来持っているはずの気づきという感性をどこまで働かせているかで人間性が決まります。感性が鈍っていれば、路傍に生えている草花に気づきません。

自分から行動し五感を使っていれば、想像力を良い方向に働かせることができます。何かに依存するのではなく、自分で判断して自分から行動することと五感を使って何事も自分で確かめることが大事です。自然に親しめば、五感を取り戻すことができます。自分から行動し、五感を使っていれば、誰かに教えてもらうのではなく、自分で突き詰めて考えたいことを見つけ、意欲的に取り組むことができます。

草木に学ぶ

春休みに地元の子どもたちと山に登りました。木々の枝から柔らかな新芽が顔を出し、軽やかな鳥の声が谷間に響いていました。ゆるやかな時間の流れを感じ、山に棲む数多くの命に出会いました。踏み出す一歩はわずかでも、歩き続けていれば、目的地に着きました。

自然の中で、汗や寒さや風や太陽に自分の体を慣れさせるのです。そして、自分の心から軟弱さや神経質さを取り除くのです。どんなことにでも慣れるようにすると、たくましい人間になります。

紀伊半島には、護摩壇山系と大峰山系と大台山系の三つの大きな山脈があります。和歌山・奈良・三重の三県にまたがる紀伊山地に登ると、地球の息吹が感じられます。目に映るのは、いくつもの山並みと澄んだ青空。聞こえるのは、鳥の声と鹿の声。

訪れる人が少ない深い山の中で、ひっそり咲いている花に出会うことがあります。ひとり静かに咲く可憐な花を、見る人はいないかもしれません。しかし、人知れず、ひそかに、精一杯の力を出して咲いているように見えます。「人間もこのように、人が見ていようが見ていまいが、誰に知られなくとも、真心を尽くせ」と、精霊の声が聞こえるようです。  「木や草は人間よりも偉いな」と思います。木や草は、雨にも風にも負けないで一生懸命に生きています。時がくれば、花を咲かせ、実をみのらせ、自分を完成させます。それに比べて、人間の中には自分を完成させようと努力しないで終わる人がいます。「木に学べ、草に習え」と思います。 

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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