英語で日常生活を眺めると…

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外国人の手助け

自分の所属する研究室に外国人留学生が来ることになり、チューター(tutor)をやってくれと教授から頼まれました。

主に通訳で、買い物や電車の乗り換えなど日常的な生活も手助けするようにとの内容でしたので、好奇心も手伝って快く引き受けました。大学院入試の試験勉強で英語の勘も少しは戻ってきたと感じていましたし、10月からとのことでしたので日常会話の勉強もそんなに急がなくていいかと悠長に構えていましたが、8月の終わりになって突然、2日後に来るのでよろしくと声がかかりました。慌てふためいたのは言うまでもありません。

彼(留学生)は大柄な体格で西アフリカ出身のようでした。国費で来日していて、2年間大学で勉強すると言っていました。

初日にやるべきことがなかなか厄介でした。銀行口座の開設、住民票登録、国民健康保険登録、入居手続き…などでした。自分も上京した時に同じ道を歩みましたが、日本人でも結構疲れるものです。手続きなんて待ち時間が長いし、入ってくる情報量が多いし、書類はたくさん渡されるし…、自分の最も苦手とするものの一つです。

まずは、文京区にある本郷キャンパスから車に乗って目黒区にある駒場キャンパス内の留学生用宿舎に向かいます。ややこしい道路をビルの間をぬって1時間ほど走ります。初めてきたという彼の目に、この日本はどのように映っているのでしょうか。車で移動している間、自分は区役所に電話して、留学生を受け付けている建物と必要なものを聞きます。

宿舎に着いてからは、外国人が宿舎の説明をしてくれました。東南アジア系のスタッフが書類を見せながら英語で説明してくれましたが、訛りが強いのか、自分にはなかなか理解できず、不安が募ります。ただ、宿舎の利用方法などは現物を指さしながら説明してくれたので、容易に理解できました。

英語で日常生活を眺めると…

受験英語しかしてこなかった自分にとって、日常生活を英語だけで済ますというのは至難の業です。

読んだり書いたりするのは何とかできますが、話したり聞いたりするのは困難を極めました。とりわけ、重要な話になってくると互いの誤解が大きな問題を引き起こしかねません。今までしてきた勉強は何だったのか、学校に合格したこと以外にどれほど役に立ったのだろうと疑問を抱かずにはいられませんでした。日常的に話せる英語を学んでいかなければ何の役にも立たないのです。英語は試験で高得点をとるために存在しているのではなく、話せる相手を増やすため、コミュニケーションの幅を広げるために存在するべきです(そして、私たちもそのような目的を意識して勉強しなければなりません)。

まずは、東京目黒区の役所まで電車で移動して住民票登録をします。彼が3000円しか日本円で持っていないというので、往きの交通費は私が予め払うことにします。切符の買い方から列車でのマナーについて簡単に説明していきます。役所についてからは用紙の記入に時間がかかりました。健康保険の窓口は17時で閉まるのですが、自分たちのために30分待ってくれて感謝です。

東京のごちゃごちゃした交通網を覚えるには路線図が一番です。渋谷で駅員に英語のマップがないか尋ねると部屋の奥からいろいろ持ってきてくれました。嬉しそうにこの地図も使いやすいよとか書き込めるように2つ持って行きなよとか気を使ってくれました。

役所関係の手続きが終わって、彼の宿舎に戻った頃には日も暮れて暗くなっていました。今晩と明日に食べるものがないことに気づき、近くの店に案内します。彼はクレジットカードを持っていたため、コンビニのATMで日本円を引き出すことが出来ました。店には果物や野菜がたくさん並んでいました。商品とその値札の見方を説明して、どれを買っておけばいいかアドバイスしていきます。よく似たものでも高いものと安いものがあることも説明しましたが、彼は値段をそこまで気にすることなくカゴに入れていきました。バナナは一番大きくてしっかりしたもの、卵は赤卵を選んでいました。なぜ、この卵には赤いのと白いのがあるのかと聞かれました。「多くの人は白を買うけど、赤い方が栄養があるので赤を選ぶ人もいる」と答えると満足していました(後で調べると栄養価は全く一緒のようです)。

最後に、別れるというときになって、彼は大きなバナナ3本とリンゴを私にあげると言いました。ずいぶんたくさんの果物を買うなと思っていましたが、それは私にプレゼントするためだったみたいです。そんなにもらうわけにはいかないので、最小にとどめてお礼を言いました。 (続く)

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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