人生の基礎となる経験　力がつく勉強法

学び舎通信 174

力がつく勉強法

勉強とは反復練習です。何事も初めから上手くできたり、完璧に覚えたりできません。こつこつ何度も繰り返すことで、徐々に問題に慣れます。慣れてくれば、問題の解き方が記憶に残るようになります。

ただ、繰り返し練習すればいいというものではありません。問題演習で何を身につけようとしているのかを、頭で考えていなければなりません。漫然と反復練習するだけでは、脳を鍛えることはできません。考える力を強くするつもりで、練習するのです。

自分の頭を使うことが勉強です。まとめノートを作るときは、教科書に書かれていることを自分の言葉に置き換えて、まとめることに意味があるのです。　

パソコンなどの映像を見ながら行う学習法で、理解力や記憶力を高めようとするのは、良い方法ではありません。自分の頭を使って、問題を解いたり、考えたりすることで、脳を鍛えた方がいいです。　

間違いを恐れてはいけません。間違えた問題をできるようにすることで成長します。解き直しをすることで、正しい解き方を記憶するのです。失敗をして、同じ失敗を繰り返さないように練習するのです。

自分で立てた勉強の計画をひとつずつ実行に移していくことが大切です。勉強は、時間をかけてじっくり考えることで、理解が深まり知識が定着します。

日常生活で育てる学ぶ意欲

保護者の方へ

学ぶ意欲を引き出すものは、ごくありふれた日常生活の中に隠れています。家庭や学校が安心して何度も間違えながら学べる場であれば、子どもたちはやる気を出して楽しんで勉強します。　

親や教師が子どもの失敗を責めずに認めてあげれば、子どもは繰り返し挑戦しようとする気持ちを強くします。安心して間違いや失敗できる環境の中で育てられると、子どもの学ぶ意欲は強くなります。

子どもに自分ひとりの力で挑戦させます。子どもが間違いや失敗をしたときは、できるようになるまで練習するのを見守ります。この方法を身につけると、子どもはひとりで勉強できるようになります。

子どもたちへ

人生には、晴れの日もあれば、雨の日もあります。人の一生には、穏やかな日差しに包まれることもあれば、吹きつける雨や風に身をすくめることもあります。どんな日でも精一杯生きて、その日でなければできないことをするのです。人生は一日一日の積み重ねです。一日を一生懸命心地よく生きることが、充実したよい人生をつくります。

どこにいても、そこが自分を鍛える道場であり、何をしていても、それが自分を磨く修行である、と思うのです。勉強をするのも、食事をするのも、掃除をするのも、顔を洗うのも、何をするのもきちんとしていれば、心のあり方が良くなってきます。今している勉強は、一生懸命にやるべきことなのです。毎日の努力が、自分をよく変えていきます。

境遇が自分の生き方を左右するのではなく、自分の生き方によって、境遇は変わります。

人生の基礎となる経験

和歌山県の小さな町で生まれ育ちました。小高い山の斜面の段々畑には、みかんの木が植えられており、今頃の季節になると山は橙色に色づきます。

農家の子どもたちは、畑に出て大人と一緒に働いていました。子どもたちは、家庭で割り当てられた役割を持っていて、一人前の仕事をしていました。

私の家は農家ではありませんでしたが、明治生まれの祖父母を手伝いました。子どもの頃に暮らしていた家は、薪で風呂を焚いていました。その薪を作ることが、冬場の私の仕事でした。今はガスや石油や電気を利用してスイッチを押せば簡単に湯が沸きますが、昔は湯を沸かすのに手間がかかりました。

薪作りは、裏山で間伐材を60cmの長さに切り分け、それらをまとめて背負子に括り付けて家まで担いで運ぶ、切り出した直径15cmの丸太を、20cmの長さに鋸で挽いていく、短く切り揃えた丸太を、斧で8等分に割っていく、それらを束ねて、物置小屋に積み上げていく、という手順で行います。

小学校高学年からこの仕事を始めました。段取りを考え、根気がなければ、仕事は上手くできません。背負子で運ぶのも、鋸で挽くのも、斧で割るのも、積み上げるのも、仕事のすべてにコツがあります。働きながら体を動かすことでコツを身につけました。 宮澤賢治や椋鳩十や新美南吉が描いた童話に出てくるような自然豊かな田舎町で、全身を使って力仕事をし、頭を使って工夫する体験ができたことを有難いと思います。子ども時代の経験が、人生の基礎となる体と心を形作ったのだと思います。