「いのちの授業」日野原重明さん
学び舎通信 81
やったらできた!
「やればできる!」「やれば必ずできるようになる!」
それまで成績が良くなかった子どもが、一生懸命勉強をして学力を伸ばしたのを何度も見てきました。
「それはもともと頭のいい子だったんでしょ」と言う人がいます。が、それは違う。
だれでも努力すれば、必ずその成果が表れます。
中学校の2学期の期末テストが終わったときの「学びの記録」にこんなことを書いた子どもたちがいます。
「全教科5回やったから、その成果が出てうれしい。まだ頑張れる気がするから、もっと頑張ろう!!」「今回のテストで数学と英語は前回のテストよりはいい点だと思います。どっちもワークを3回やったかいがあった」
2学期の中間テストから期末テストまでの約1ヶ月間、今までより勉強量を増やして、5教科の合計を70点上げた子もいます。
だれにでも力はあります。その力を出す方法は、練習量を増やすことです。たくさん練習することで力が出てきます。「勉強してるんだけどテストの点数が上がりません」という人は、勉強する量をもっと増やすのです。人が3回繰り返ししているところを5回繰り返してすれば、点数は必ず伸びます。
いのちの授業
2月のある晴れた日に日野原重明さん(聖路加国際病院理事長、99歳)は、神戸海星女学院小学校を訪れました。あらかじめ送っておいた20本の聴診器を子どもたちに分配して、向かい合う友達同士で、心臓の拍動する心音を聞かせました。
日野原さんは子どもたちに「君たちはいのちを持っている?」と尋ねました。子どもたちはいっせいに「はい」と答えました。
「どこにいのちがあるの?」と尋ねると、子どもたちはしばらく首をかしげました。ある少女が胸の心臓のあたりに手を当てました。
「心臓の拍動が止まれば、人は死んでしまいます。しかし、心臓そのものがいのちではありません。
心臓は管(血管)を通して、胸をはじめ、手や足に、酸素と栄養を分配するもので、心臓というポンプが止まると、人は死んでしまいます。しかし、心臓そのものはいのちとは言えません。
いのちは君たちが持っているものです。でも、それは目には見えないものです。
君たちは時間を持っているでしょう、自分の好きなように使える時間。その時間は、人間の寿命とも言われています
「君たち、朝起きてから夜寝るまで何をした?」
「朝起きて顔を洗い、洋服を着て朝食を食べ、学校に出かけました。教室では算数、国語、音楽を勉強し、お母さんの作ったお弁当を食べ、午後は体育をしました。夕方、家に帰っておやつをいただき、宿題をして、お父さん、お母さん、妹と一緒に夕食を食べました。それからテレビを見たあと、お風呂に入って10時に寝ました」
「そう、それらはみんな君たちが、自分だけのためにやったこと。君たちが持っていて勝手に使える時間こそが、君たちのいのち。自分が使える自分の時間、君たちが持っているいのちを、自分だけのためでなく、誰かのために使えないだろうか。今でなくても、大きくなってからでもいい」
授業の終わりに、日野原さんは「シャボン玉」の歌を一緒に歌おうと呼びかけました。
シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
・・・・・・
「これは、野口雨情さんが、生まれたばかりの自分の赤ちゃんが死んでしまったことを悲しんで作った歌ともいわれています。シャボン玉が空に高くのぼり、その先、強い風ではじけて消えたりしないことを祈って作ったという話があります。
みなさん、からだも心も大切にして元気でいてください。そして君たちの持っている時間を、いのちを人のために使ってください」
この「いのちの授業」を終えたあと、午後から日野原さんは保護者の方々に家庭での教育が学校での学習以上に大切であることを話しました。
「子どもたちが学校では知識を教えられ、家庭では両親の『真似』をします。それが『学び』という言葉になりました」
いのちのパワー
学び舎の周りに、ヤマザクラ、コナラ、クヌギ、カエデ、カキ、ヤマボウシ、モモ、ネムノキ、フジなどの落葉広葉樹が生えていますね。秋の終りに葉を落として、今は裸になっています。
そんな木を眺めていると、秋は1年の終わりのような感じがします。しかし、秋は1年の始まりと言ったほうが当たっているかもしれないのです。
裸になった木を観察してみましょう。
裸の木の枝をよく見てみると、小さく膨らんだものがたくさん見えますね。この小さな膨らみは冬芽と呼ばれます。中では、花や葉っぱになるための準備が進められているのです。
冬の山は眠っているように静かです。冬は自然が休息している、と私たちは言います。ところが、本当は、自然は必死になって春に向かって突進しているのです。
花は突然咲くのではないのです。葉っぱは突然出てきたりはしないのです。木は冷たい風に吹かれながら、花を咲かせるための、葉っぱを出すための準備を少しずつしているのです。
いま用意が整わないものは、春になっても整いません。
未来は、私たちの先にあるのではありません。もうここに、芽の形で存在しているのだから。未来は私たちと一緒になっているのです。
私たちには、チューリップの芽は見えません。それは芽が地面の下にあるからです。私たちに未来が見えないのは、未来が私たちの中にあるからです。
土の中の小さなチューリップの球根がひそかに芽を出しているのを想像してみましょう。土の中で、柔らかい白い芽が苦闘(苦しい戦いをすること)しながら道を切り拓いているのです。
みなさんの体の中にも、未来に向かう小さな芽が出ているのです。その小さな芽がぐんぐん成長し、やがて花を咲かせるときがやって来るのです。
自分の体の中にある小さな芽を育てるのは、自分です。身の周りの世話は家族の人がしてくれるかもしれません。しかし、ほんとうに自分を育てることができるのは、自分だけなのです。
でもどうやって自分を育てればいいのでしょう?
毎日を一生懸命生きることです。一日一日を大切に精一杯生きることで体の中の芽は育ちます。
生きていれば、心配なことがあったり、不安になったりすることがあります。しかし、私たちには、心配や不安を吹き飛ばすパワーが備わっています。
人間には、例外なく素晴らしいパワーが備わっているのです。そのことは偉人(世の中のためになるりっぱな仕事をして、人びとからたたえられる人)の伝記を読むことでも、毎日の新聞を読むことでもわかります。
いちばんたいせつなことは、生きた人間であること。成長し続ける人間であることなのです。
学び舎の黒板の右側に何枚かの花の写真を展示しています。山の友達(もうすぐ70歳になるおじさん)にいただいた写真です。可憐(かわいらしいようす)な花に見えますが、パワー、生きようとする力を持っています。雨が降ろうが、風が吹こうが、人が見ていようがいまいが、どんなところでも咲くのです。
英単語を覚える
北海道の中学校で英語教師をしていたころ、定期的に英単語100問テストをしていました。生徒たちは必死になって覚えました。人口7,000人の小さな町(中学校1学年の生徒数120名)でしたが、勉強に熱心な生徒がたくさんいました。
学び舎の中学1年生も、1月5日に約100問の英単語テストをしました。最初は「え~、そんなにたくさん覚えられへん」と言っていた人もいました。最初のテストでは合格者は2名。再テストで3名合格しました。1月25日にもう1度同じテストをしました。そのときは、6名合格。再テストで2名合格して、全員目標を達成することができました。
英単語を覚える一番確実な方法は、発音し、書いて覚える方法です。頭で覚えるのではなく、口に出し、書きながら体に覚えさせるように繰り返し練習するのです。
日本の中学校における英語の必須語彙数は、1,000語です。ところが、韓国と中国では3,000語です。しかも韓国や中国の中学生は、5,000語くらい覚えようと頑張ります。やる気や意欲は、韓国や中国の中学生の方が圧倒的に高いのです。
中学生は、1日3語の英単語を覚えるといいです。そうすれば、1年間で1,000語、3年間で3,000語になります。これだけ覚えれば英語に自信がつきます。
高校生になったら毎日5単語覚えるようにするといいです。3年間で5,000語覚えることができます。これも、やればできます!