特急列車の回路をつくる

学び舎通信 86

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やればできる、必ずできる!

中学校の中間テストが5月の末にありました。5教科合計の最高点は472点でした。過去最高の490点には及びませんでしたが、素晴らしい成績です。ほとんどの人が学年末テストより、30点から90点上がっていました。中には124点も上げた人がいました。「やればできる!」ことが実感できましたね。

中学校のテストの点数は努力点です。一生懸命頑張った分が点数に出ます。生まれつき持っている力は、みんなほとんど同じなのです。テストの点数は、頑張ったか、頑張らなかったかの違いなのです。

けれども、頑張ったのに良くなかったという人がいるかもしれません。勉強の進み方は、人によって違います。特急列車のようにビュンビュン進む人もいれば、各駅停車でゆっくり進む人もいます。

ゆっくりでもいい、時間がかかっても少しずつ前に進むのです。そうすれば、必ず目的地に到着できます。各駅停車の普通列車でも、一駅、一駅あきらめずに進んでいくのです。そうやって、ゴールにたどり着いた人が何人もいます。あきらめずに、頑張り続ける力を持っている人は、最後に成功することができます。そういう素晴らしい人が、みなさんの中にもみなさんの先輩にもいるのです。

「やればできる、必ずできる!」のです。

努力するには

どうすれば努力することができるのか、力の出し方がわからない、勉強の仕方がわからないという人がいますね。

そういう人は、夜更かしや朝寝坊をしていませんか?朝・昼・晩の三度の食事をしっかり食べていますか?テレビやゲームやマンガなどでダラダラしていませんか?勉強するときの姿勢が悪くありませんか?毎日本を読んでいますか?まずは、勉強するための体づくりをするのです。

力が発揮できる人は、①遅刻や欠席をしません。5分前には着席して勉強を始めています。「しっかり勉強して賢くなろう」という意欲が感じられます。②宿題を最後まできっちりしています。間違った問題は、やり直しをしています。③勉強道具の忘れ物をしません。勉強道具を大切にしている人は、勉強の仕方も丁寧です。④学び舎のテストで満点を取っています。勉強したこと、覚えるべきことを記憶しています。⑤テキストを3回以上繰り返して練習しています。1回練習しただけで、できるようになる人などいません。知識を身につけるには同じことを何度も繰り返し練習する必要があります。

野球のイチロー選手は、練習開始の1時間前にはグラウンドに入っているそうです。また、子どもの頃から自分のグローブやバットやシューズを大切に扱っているそうです。一流と呼ばれる人は、練習にも道具にも心をこめています。「心をこめる」とは、気持ちを十分に注ぐということです。行動の一つ一つに心をこめることが、努力になるのだと思います。

問う力

子どもを見ていると、テストを受ける前に「この子は今度のテストでこれくらいの点数を取ってくるだろう」ということがわかります。日頃の勉強に対する取り組み方で、力のつき具合がわかります。

問う力(わからないことをたずねる力)のある子どもの学力は、伸びます。まず、自分でじっくり考えて、どうしてもわからない場合に、質問する子は伸びます。よく考えもしないで「わかりません」というのは、駄目です。

一度の説明で理解できなかったとき、わかるまで質問をする子どもがいました。「この子は伸びるだろうな」と思っていると、案の定、見違えるように学力が伸びました。

タフ(精神的・肉体的にねばり強くたくましいようす)な子どもも伸びます。何度間違えてもしょげたり、へこたれたりしない子どもは伸びる力を持っています。自分のことは自分でしたり、宿題をきっちりすることで、タフな子どもに育つことができます。

小学生の宿題は、保護者の方に見ていただています。1・2・3年生は、答え合わせを保護者の方にしてもらって、間違い直しもチェックしてもらっています。4・5・6年生には、「答え合わせは自分でするかお家の人にしてもらってください、間違った問題はやり直して、お家の人にサインをもらってください」と伝えています。

ここで大切なことは、①問題を解く②できるだけ早く答え合わせをする③間違えた問題はすぐやり直す、ということです。これが効果的な学習法です。

鍛錬を積む

「学ぶ」という言葉は、「真似ぶ」から来ています。「真似る」は同じことを繰り返すという意味です。

勉強で大切なのは、基礎を繰り返し練習することです。「わからない」という人は、基礎練習を積み重ねが不十分で、問題の解き方を覚えていないのです。

基礎問題を徹底的に繰り返す、つまり基本問題の解き方の真似をして繰り返して練習をすることで、問題の「型」がわかってきます。基本問題を繰り返し練習するというのは、考えるための基礎をつくっていることになるのです。問題の「型」がわかれば、応用問題にも対処できるようになります。

体にしみついた基礎は忘れません。基礎があって初めて新しい知識を積み重ねていけるのです。基礎練習をしないで問題を解こうとするのは、基礎工事をせずに家を建てるようなものです。

イチロー選手は「練習の虫」だと言われています。普通の選手なら飽きてしまうような基本の練習を、飽きずに何百回でもできる、そこにイチロー選手の才能があるのです。誰よりも早く球場に来て、素振りの練習を徹底してやる。普通の選手なら途中で投げ出してしまうくらいの練習量をイチロー選手は黙々とこなすそうです。

「鍛練」という言葉があります。もとは金属を打ち鍛えるという意味でしたが、いまは、「訓練を積んで、体力や精神力を鍛えて、困難に勝つ力をつける」という意味でも使われています。勉強で言えば、基礎練習の積み重ねで解き方の技術を磨いて、応用問題を解く力をつけるということになります。

基礎の重要性

一流と呼ばれる運動選手や芸術家は、基礎練習を飽きずに繰り返すことができます。

なぜそんなことができるのでしょうか。

きっと基礎の重要性を知っているからでしょう。基礎を徹底して身につけていくことでしか、次の段階に上がれないことを、経験を通して知っているからに違いありません。

では、基礎を徹底して体で覚えてしまうと、なぜ次の段階に上がれるのでしょうか。

それは、脳の中に特急列車のように一瞬で通過できる回路(通り道)が作られるからだと思います。

普通、頭の中で物事を考えるときはAならばB、BならばC、CならばDという具合に各駅停車で順番に回路をつなげていきます。

しかし、毎回、同じことを練習していると、AからDに瞬時につながるようになるのです。ABCDと通過しているのですが、いちいちAである、Bである、と認識せずにスッと特急で行けてしまうのです。それが「体で覚えた」という状態なのです。

イチロー選手も初めは素振りをするとき、腕はこの角度で曲げて、足はこのくらい開き、この筋肉をこう動かして、次はこう動かして、と一つ一つ意識しながら練習したのだと思います。

しかし、だんだん体で覚えていくと、意識しなくても神経や筋肉がピッとつながって最適なフォームで打てるようになったのだと思います。どの神経やどの筋肉をどう動かすかが、一瞬で全部つながってしまうのでしょう。

特急列車の回路をつくる

体で覚えた基礎、つまり“特急列車の回路”をたくさん持っていたほうが、目的地に早く着くことができます。それが「頭がよい、頭の回転が速い」ということの意味です。

基礎的な勉強を繰り返し、飽きずに何度もやって、体に覚えさせてしまうのです。繰り返し練習するのは辛くて飽きます。勉強でいちばん辛いのは、この繰り返し練習することです。

しかし、体で覚え、意識せずに到達できる特急列車の回路を何本も作ってしまえば、問題を解くのが楽になります。

国語の読解問題が苦手な人は、テキストの文章を、できれば3回音読しましょう。声を出して丁寧に読んでください。国語の苦手な人の多くは、文章をきちんと読んでいません。読みながら「大事だな」と思ったところに、傍線を引いておくといいです。国語の音読も大切な基礎練習なのです。音読を続けたことで、国語の力をぐんと伸ばした人がいます。

小学低学年は『ピラミッド』、高学年は『コア』、中学生は『ウイニング』をテキストにしています。これらのテキストにある問題は、精選された良問です。教科書より難しい問題もありますが、できれば全部解いてください。正解できなかった問題は、もう一度考え直してできるようにしておきましょう。そうすれば、公立のトップ校に合格できる力がつきます。テキストの問題を全て解けるようになった人、つまり、繰り返し練習で特急列車の回路を作った人は、全員、楽々トップ校に合格できています。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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