自分の中にある強い心を引き出す 吉野敬介さん

学び舎通信 82

目次

やる気だけで勉強する

吉野敬介さんが大学に入学することを決めたのは、20歳の9月のことでした。そして、わずか4ヶ月間の受験勉強で大学に合格しました。どんな方法で勉強したのでしょうか?

吉野さんはそれまで、勉強とは無縁の生活をしていました。基礎学力もなく、勉強計画を立てる力もありませんでした。吉野さんは、「やる気」だけで勉強を続けたのです。

「実際に俺は『やる気』の塊だった」と吉野さんは言います。

「高校でさえやっと卒業できたのに、20歳の9月で大学受験を始めるなんて馬鹿げている」と周りの人に言われてもいい、大学受験することを宣言して、自分を追い込みました。そうすることで、「やる気」を持続したそうです。

やる気を持続させる

その他にも「やる気」の持続に役立った方法がいくつかありました。たとえば現代文の勉強です。

吉野さんが受験勉強を始めた時、まったく現代文がわかりませんでした。問題に取りかかって問題文を必死に読みこむのですが、3分後に吉野さんはこう思っていました。

「……なんだこれ?なにが書いてあるか、さっぱりわかんねえなあ。これは日本語がじゃない」

それは吉野さんにとって今まで目にしたことがない文章でした。

「これじゃ手も足も出ない。問題文を読んでも内容が頭に入ってこないし、なんにもイメージがわかない。もちろん筆者が最終的に何を言いたいのかもさっぱりわからない」

文章が読めなかったら、当然、試験問題が解けるわけがありません。

「これはあまりにも理解できなさすぎだ。遠回りのようだけど、いっそのこと書いちゃおうか。じっと読んでいてもらちがあかないなら、書きゃ、どうにか理解できるだろう」

それから朝の2時間、吉野さんは朝日新聞の社説をノートに書き写す、ということを始めました。それをしてもだれが採点してくれるわけではありません。けれども、ともかく書いてあることを写してその内容をまとめてみました。社説は入試にもよく出題されます。

「現代文は書いてあることが完璧に理解できれば問題を解くことができるし、この方法をじっくり続ければ理解力はきっと深まるだろう」と吉野さんは感じていました。

不安をふきとばす

しかし、途中で不安になってきます。

「この方法で大丈夫かな」

そう感じたらノートをパラパラめくってみました。そこにはまぎれもなく自分が「集中をぶつけた証拠」がありました。それを信じて、吉野さんは受験までの4ヶ月間、毎日必死にそれを続けました。

それで4か月後、どうなったのでしょうか。

国語の偏差値は25から86になりました。偏差値25は、ほとんど正解できていない状態です。偏差値85は、満点かそれに近い答案です。吉野さんは、その時のノートを今も捨てずに取ってあるそうです。

目に見えるかたちで自分のやる気を確認する

吉野さんの社説を書き写したノートもそうですが、自分の勉強したこと、頑張って続けたことを目に見える形で残しておく。そして、くじけそうになったとき、それを目で確かめてやる気を取り戻すという方法があります。

ある弁護士になった人は、こんな方法で受験勉強をしていました。

〈英単語を紙に書いて覚えるとき〉用のボールペンを1本だけ決めて、月始めに用意しておく。

目標は1か月でその1本を使い切ること。

そして半年後の受験を目標として6本を並べて置いて、毎月1本ずつ新しいボールペンで勉強する。

たったそれだけでも、インクの残量を一目見れば、自分がどれくらい英単語を覚えようとしたのかわかるし、「自分はこれだけやったんだなあ」って自信にもつながったそうです。

「やる気の素」作りに重要なもののひとつに、「目で見えるものから引き出される、やる気」があります。

自分の中にある強い心を引き出す

吉野さんは勉強を続けていくうちに、「自分が決めたことを貫く」ことしか頭になくなりました。大学に受かることだけを考えました。「自分を追い込んで、限界なんか作らずに勉強をしまくったんだ」

そして、その結果、大学に合格することができたのです。

「やる気を持つって何か?」

それは結局、自分を追い込む心が持てるかどうかってことにつながる。

まずは強い心を持とうぜ。それが目標を支えるはず。そして目標は『やる気』を無限大に生み出す。その作用を、最大限引き出す方法を考えることだ。

人間はその心で決まる。

夢を目標に変えるのは、強い心なんだ。

強い心を持てば、途中でやめたりしないはず。

受験だって、人生だって、要は『方法探しのレース』だ。達成するには、習得するには、記憶するのには、何が一番効率がいいのかを考えて、試して、探らないといけない。

そして、最終的な答えがあるのは自分の中だけ。人の方法は人の方法だから、参考にするのはいいが、最後は、自分で自分の勉強法を作らないと。だって試験を受けるのは自分なんだから」と吉野さんは言います。

自分を知る

自分の勉強法を作るには、まず自分のことを細かくチェックします。

「自分はこういう方法がやりやすいな……、自分はこういう方法は苦手だな……」

そんな確認を繰り返してみます。そうやっていろいろ方法を探り続けた時、ある日突然、「これならできる」と感じる方法をつかむことができます。

「これをしたい」ということよりも、「これならできる」と思えることをするのです。または「これならうまくいきそうだ」と思えることをするのです。それが決定的な「やる気の持続」を生みます。「これならできる」ことをするのです。まずは「できる」ところから入って、そこから徐々に広げていくのです。

まずいろいろと試してみて、自分にできそうなものを探して、「これならできそうだ」と決めたら、それを信じて、どうにか形になるまで続けるのです。

自分の「これならできる」を実行してほしい。そしてある程度形になり、自分のものになってきたら、そのままつき進むのもいいし、また少し違った方法を取り入れてもいい。そうやって試行錯誤していくうちに自分の勉強方法が確立していくから、一気に突っ走れ。

そうすれば「やる気」は習慣という形になるはずだし、継続するはずだ。

とにかく頑張り続けることが重要。

「今から始める。それを続ける」

それに勝るものはないんだ。

ただそれがきつい人は、一気にとは言わなくとも、そうやって徐々にでもいいから自分やる気になる方向に向かっていってくれ。ただ目的意識は忘れないことだ。

素晴らしい勉強方法とは、

情けない自分を知り、やる気のある自分にかえること。

飽きっぽい自分を知り、集中力のある自分に変えること。

まずは今日を頑張ること。

今日を頑張れないヤツは、明日を頑張れるわけがないんだ。

そして明日も、その日1日を頑張ること。明後日も、その日1日を頑張ること。

毎日そうやって今日1日を頑張り続けること。

それが大切。

きっといつか自分の一生をふり返る時があると思う。その時に自信を持ってふり返ることができるのかできないのか、それは頑張り続けてきたのか、そうでないのかにかかっている。

俺はいつも走り続けきた。

弱音なんか吐いている暇なんてないほど、失敗とか挫折の連続だよ。もちろん自分自身に負けてしまう時もあるし、後悔も絶えない。

でも自信を持って生きていけるのは、いつも走っているから。

走ることをやめない以上、俺は進んでいる。止まっていないということは、常に結果へと一歩ずつ近づいている証拠だ。その過程は、結果よりも大事なことなんだと俺は思っている。

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学び舎タイムズ編集部

教職歴37年。中学・高校教諭、予備校講師を経て、1996年6月に小さな個人塾を開塾しました。
「将来的に役立つ学力を身につけた子どもを育てたい」という想いから生まれた、こだわりの天然木造教室は保護者からも好評です。

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