脳科学の知見を活用して学ぶ
私は主に次のような流れで勉強していました。
- 小学生:日々の学習習慣を身につける
- 中学生:自分に合った勉強方法を確立する
大事なことは、問題が解けるようになることではありません。テストで点数を取ることでもありません。最も重視すべきことは、勉強の仕方を工夫することです。
勉強方法を確立するには、脳科学の知見を活用するのがおすすめです。手当たり次第に試行錯誤しても迷子になってしまうことが多いです。今回の記事では、脳の特徴をしっかりと押さえて、脳機能を最大限に発揮できる方法をご紹介していきます。
記憶の仕組みを理解する
前回の記事で記憶の概要をお話ししました。もう一度復習しておきます。
記憶は大きく2種類に分けられます。
- 短期記憶:すぐに忘れる 顕
- 長期記憶:ずっと覚えている 顕 潜
大半の情報は短期記憶に振り分けられます。しかし、このままだとすぐに忘れてしまうため、長期記憶に移行する必要があります。
長期記憶にはいくつか種類があり、前回は太字の2種類を紹介しました。
- エピソード記憶:個人の思い出(鮮明)顕
- 意味記憶:知識(ど忘れすることも)顕
- 手続き記憶:体で覚える手順 潜
- プライミング記憶:無意識(勘違いの元)潜
これらの記憶は自分の意識を挟んでいるか否かでも区分されます。次の2つのレベルがあります。
- 顕:顕在記憶。個人的に意識している
- 潜:潜在記憶。意識が介在しない
顕在記憶の方が思い出しやすい特徴があります。
「忘れにくい」勉強のコツ
ちょっと話が難しくなりましたね。背景はこの辺りでおしまいにして、本題に入りましょう。
これまでに述べてきたことをまとめると勉強のコツはただ一つ。短期記憶を長期記憶に移すのです。特に意味記憶をエピソードと関連づけることで忘れにくくなります。
例えば、数学で〇〇の公式を習ったとします。単にノートに書いただけではすぐに忘れてしまいます。時間が経っても覚えておくには、情景と結びつけるのです。そういえば、黒板に太陽の光がやわらかく差しこんでいたな…とか、そよ風でカーテンが揺れていたな…とか。あるいは、先生がこんな雑談をしていたな…とか。教室全体の雰囲気を連想することで記憶はより強固なものとなります。ノートに天気や簡単な日記をメモしておくとgoodです。是非とも実践してみてください。
エピソード記憶でもっと伸びる
アインシュタインの言葉に「想像は知識よりも重要である」というものがあります。記憶も同じ。想像すればするほど記憶に残りやすくなります。シナプス(情報伝達の接続部)の繋がりを強化するのです。物事はお互いに連合すると記憶しやすくなり、さらに忘れにくくなります。これを「精緻化」と呼びます。
さらに覚えやすくするには、暗記事項を経験と結びつけることが大事です。自分の体験が関連するとエピソード記憶となります。つまり顕在記憶のレベルに引き上げることで思い出しやすくなります。
エピソード記憶を簡単に作る方法があります。覚えた知識(意味記憶)を、友達や家族に説明してみるのです。すると「あのときこうやって説明したな」とか「友達は感心して聞いてくれたな」というようにエピソードとして記憶できます。
人に説明することの利点はこれだけではありません。説明によって自分が本当に理解できているのか確認することができます。友達から質問されたとき、一緒に考えることで自分が気づかなかった事柄の発見にもつながります。私の家庭では夕食時が主なコミュニケーションの場として機能していました。毎日必ず家族全員で一緒に食卓を囲むようにし、その日の楽しかったこと、学校で習ったことをたくさん話しました。これが良かったです。自分が学んだことを説明することで、復習にもなりましたし、時折飛んでくる親の質問に答えることで自身の理解も深まりました。また、試験前には通学列車や教室で試験対策講座を開いたりもしました。テストで出そうな箇所や要点をみんなに説明するのです。これによってみんなの点数が上がりましたし、私もみんなの弱点を知ることでさらに対策できました。
ただし、こうして獲得したエピソード記憶も時間が経つと意味記憶にすり替えられるという弱点があります。そのため、定期的に人に説明することでど忘れを防ぐ必要があります。