受験で得られたもの・楽しむコツ
受験の弊害
私は幼少期の頃から、右へ左へと寄り道しなから勉強するのが好きでした。理科の学習で昆虫の話が出てきたら、実際に飼育して生態を確かめたり、図鑑を開いて仲間を調べたりしていました。算数の問題を解くときも、自分のペースでゆっくり進めていました。わからない問題が出てくると、これまでのページを読み直したり、窓の外を眺めたりして、解法が閃くのを待ちました。一見すると非効率で進捗が無いように見えますが、この積み重ねで思考力と集中力を身につけることができました。「学ぶことはなんて楽しいのだろう」と感嘆の気持ちで日々を送っていました。
平穏な日常は中学受験によって一転しました。人生で初めて受験をするにあたり、過酷な競争社会にさらされました。自分の上には、途方もなく多くのライバルがいることを知りました。受験はスピードが命です。どれだけ多くの場数を踏んできたかが合否を分けます。配布された問題をのんびり眺めている暇はありません。解法を素早く見つけて解答しなければなりません。思考力だけでは確実に遅れを取るため、解法を暗記する必要がありました。この傾向は大学受験でも続き、次第に勉強内容が無味乾燥なものへと変容していきました。「違う。こうじゃない」と思いつつも、抜け出せない生存競争に参加していました。
自分の意志で希望した受験人生ですが、わだかまりがありました。行先の見えない迷宮に紛れ込んだようです。競争が激烈化するにつれ、自分を見失いやすくなります。駒をいかに早く先に進めるか、そのことばかり考えていました。ふとした折に、はち切れそうな不安と迷いが押し寄せ、それを誤魔化すように勉学に打ち込みました。
受験を楽しむコツ
せめてもの救いは、私が勉強好きだったということです。新しいことを知る。なんの変哲もないことかもしれませんが、私の勉強のモチベーションは未知の事柄への探究心が全てです。本を一冊手に取ると図書館の本を全て読んでみたいと思い、一つの山に登ると周りに見えている山を全て登ってみたくなる。あらゆる子どもが生まれつき備えている探究心を大切にしていました。これは受験についても当てはまります。周りよりも一歩進んだ内容を習得することに喜びを感じ、瞬発力や暗記力を強化するための詰め込み学習さえも新鮮な感覚で取り組むことができました。自分で工夫と改良を重ねた勉強法の成果と独学の限界を試す場でもありました。試験に合格した先には、新しい景色が広がっています。途方もない才能を発揮する人々を目の当たりにし、努力では追いつけない世界があることを知りました。
もし、私が受験していなければ、一生、こうした人々とは出会えていなかったでしょう。受験は新しい環境を切り拓くための手段でもあります。
受験で得られたもの
受験は学習意欲を掻き立てる起爆剤として機能しました。明確な目標を設定する。極めてシンプルなことですが、目標を立てながら取り組むことでスムーズに事が運びました。例えば登山を趣味にしたい場合は、相応の体力が必要です。そのために周りの山を少しずつ登っていきます。ある程度体力が身につけば、次はこの山、そしてあの山…と順に行動範囲を広げていきます。目標があるおかげで気づいたときには屈強な身体へと成長しています。 また、あらゆる分野について一通りの知識が身につきました。古典や現代文は自分の偏狭な価値観を広げてくれました。「たくさんの事項を暗記してもすぐに忘れるし、生活に直接役立たない。受験は無駄だ」と思う人もいるかもしれません。私もそのように思ったことがありました。それでも当時は、誰もが経験すべきものだと認識していたため、可能な限り楽しんで取り組みました。どうせやるなら楽しんだもの勝ちです。結果として効率的な勉強法に繋がりました。習得した多くの知識のおかげで思考に幅が出ました。
非受験生がすべきこと
将来、入試を控えている人にぜひともおすすめしたいことがあります。それが「入試本番で出された問題を本番と同じ時間帯、制限時間で解く」ことです。受験生の目標は志望校の入試に合格することです。どんな問題が出されるのか?どのような時間配分で解けばいいのか?これらをしっかり把握しておくことが大切です。解ける問題が見当たらなくても、一通りの問題に目を通します。ゴールを明確にすることは目標を達成する上での鉄則です。早い段階でレベルを把握し、調整することで学習が捗ります。受験という人生の一大イベントを存分に楽しんでください。